研究概要 |
マイクロアレイ法により子宮平滑筋に比べ子宮筋腫での最も強い発現亢進を認めたFrizzled related protein 1 (FRP1)は,mRNAレベルと蛋白レベルの両者において,子宮筋腫の方が子宮平滑筋よりも発現が亢進していることが判明し,しかも月経周期では,増殖期後期(血中エストロゲン濃度が高い環境)に最も強く発現していた。GnRHアゴニストの治療を受けている筋腫では殆ど発現していなかった。子宮筋腫および平滑筋細胞の培養系では,estradiol添加,血清除去,低酸素状態の培養条件でそれぞれFRP1の発現が亢進した。さらに,平滑筋肉腫細胞株を用いて血清除去によるアポトージスの誘導実験では,FRP1のアンチセンスでFRP1を抑制することでアポトージスの誘導が増強された。これらの実験結果から子宮筋腫では,FRP1が高エストロゲン状態で強く発現しており,それも細胞増殖に関係なく,アポトージスを防御していることがin vitroの実験で判明した。このことから,子宮筋腫細胞はFRP1を発現することでアポトージスが起こり難い状態を獲得しているものと考えられた。次に,DNA修復酵素であり複数転写因子の活性調節因子であるredox factor 1(Ref-1)が子宮筋腫と子宮平滑筋で従来報告されている37kD型に加え35kD型Ref-1蛋白の発現がみられ,子宮平滑筋では35kD,筋腫では37kDのRef-1蛋白が優位に発現していることが判明した。そして解析の結果Ref-1蛋白質は増殖に関与し,リン酸化による翻訳後修飾を受けることが示唆され,筋腫の増殖に深く関わる物質であることが判明した。
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