研究概要 |
凍結保存された約300の神経芽細胞腫症例の腫瘍組織と末梢血を用いて,以下の検討を行った。 染色体1.2.3.11.13.17.19.21.22番の大腸菌人工染色体(BAC)クローンから作製した、アレイCGHを作製し、これに腫瘍と末梢血由来のDNAをラベルしてハイブリダイスした。その結果、予後良好な神経芽腫では遺伝子領域の欠失或いは増幅はほとんど認められなかったのに対し、予後不良であった神経芽腫では1番の欠失と17番の増幅を認め、他の領域にも遺伝子量の増減が認められた。さらに胎児神経由来cDNAライブラリー由来のcDNAから作製したアレイと、市販のアレイを用いて、予後良好な神経芽腫と不良な神経芽腫由来のRNAをラベルしてハイブリすると、予後不良の神経芽腫ではMYCN, hTERT, VGEF, Cyclin G1などの発現が増強しており、一方予後良好例ではMMP9, CD44, NGF, Caspase等の発現が増強していた。5例で腫瘍内heterogeneityの検討(5例)や化学療法後の摘出腫瘍での腫瘍細胞の変化の検討(4例)では、腫瘍細胞の存在する領域をマイクロダイセクションシステムで切り出し、hTR, hTERT発現の測定を行い、また、DNA, RNAを抽出、増幅して、ラベルしてアレイ解析した。前者では、2例にRT-PCR,免疫染色でhTERT発現に差を認め、アレイ解析ではhTERTのみならすPDGFR, Cyclin等の増強がみられた。後者では、化学療法前と比較し、遺伝子変化は乏しかったが遺伝子発現ではCaspase, Cadherin等の変化を認めた。退縮,分化が確認多発例、再発例5例では、退縮例ではCaspaseの発現増強がみられ、一方分化例ではNGFなどの成長因子の発現がみられた。これらの既知の遺伝子に加え、多くの未知の遺伝子が発現変動しており、これらについて解析中である。
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