研究概要 |
ラットに四血管閉塞/再灌流を行い,一過性前脳虚血モデルを作成して,脳虚血に伴って発現量の変化する遺伝子をディファレンシャル・ディスプレイ法を用いて単離することを試み,減少する遺伝子としてphosphatidylinositol 4-kinase(PI 4-K)の同定に成功した.PI 4-K蛋白質は海馬ニューロンに多く発現していること,また,虚血に伴って細胞死が起こるCA1領域においては,細胞死が観察される前に先んじて減少することがわかった.さらに,PI 4-Kの過剰発現は有意に低酸素による細胞死を抑制すること,PI 4-KはAktの活性化を増強・維持することがわかった. 低酸素ストレスや脳虚血によって誘導されるPDI結合蛋白質として小胞体膜蛋白質 ubiquilinを単離し,それがPDIの低酸素ストレスによるニューロン死抑制作用を増強することを明らかにした.さらに,ubiquilinが低酸素ストレスによる小胞体ストレスによって誘導されるアポトーシス促進転写因子CHOPの誘導を抑制したことから,PDIやubiquilin の低酸素ストレス防御作用は小胞体ストレス抑制によるもにであることが,示唆される結果を得た. 哺乳類における小胞体ストレス誘導遺伝子HRD1をバイオインフォマティクス的解析により,単離・同定した.これらの遺伝子の特徴として,小胞体に局在し,小胞体に蓄積した変性タンパク質の分解系である小胞体関連分解(ER associated degradation : ERAD)に関与する遺伝子であることが判明した.また,HRD1を哺乳類細胞に過剰発現させることによって小胞体ストレスによる細胞死が抑制されるか解析したところ,小胞体ストレス特異的に細胞死を抑制することを示した.
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