研究課題/領域番号 |
13308008
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (10250507)
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研究分担者 |
入野 智久 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助手 (70332476)
長尾 誠也 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (20343014)
山本 正伸 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (60332475)
松井 章 独立行政法人文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究管 (20157225)
西本 豊弘 国立歴史民族博物館, 考古研究部, 教授 (70145580)
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キーワード | 安定同位体 / 人類活動 / 質量分析 / 土壌有機物 / 初期農耕 / 家畜 / 雑穀 / バイオマーカー |
研究概要 |
化学分析を手段として先史人類が生活した痕跡を遺跡から検出することを目的に、土壌中の同位体や化学物質のマーカーの分析方法を最適化し、その指標の有効性について検討した。特に農耕や家畜の飼育などに焦点をあて、そのような生業活動の後に土壌や遺物に残留したはずの特徴ある化学物質を脂質化合物から同定し、人類活動の判別方法として妥当性を試験した。可能性のあるマーカーとして、農耕栽培によって攪乱を受けた土壌を、自然植生の土壌と区別するものとして土壌有機物の^<13>C、^<15>N濃度の変化が起こりうることが明らかとなった。C4植物の栽培による^<13>C濃度の増加は現代のトウモロコシ栽培地と同様であった。また施肥が行われていたばあい、家畜や人類の排泄物からの動物性脂質由来の有機分子を検出できるかどうかを江戸時代の埋没遺跡(上福島中町遺跡)の人家跡と畑跡の土壌で検討した。ヒトの胆汁に含まれるデオキシコール酸が肥だめ跡や、施肥をしたと思われる畑土壌から検出された。現在飼育されている家畜糞から作られる堆肥を試料として、ステロール、脂肪酸、胆汁酸の構成成分の分析を行い、反芻動物とそれ以外、鳥類などの種類の違いにより、分子組成の異なる結果が得られた。これらの分析手段を縄文前期の美々遺跡の土壌に応用したところ、自然植生の土壌と異なり、何らかの人為攪乱の可能性が示唆され、この方法による栽培や施肥の同定を検証する方法として、有機バイオマーカの利用法が有効であることを明らかにした。イノシシの家畜化によりブタへの変移が行われた課程を、約7千年前から2千年前までの出土骨の分析により検証した。その結果琉球列島で出土した弥生相当期以前のイノシシには、現地産の野生イノシシとは異なる食性の個体が多数含まれており、その一部は朝鮮半島とのつながりを示す結果であることを明らかにした。
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