研究概要 |
平成14年度は,地殻変動モニタの基盤である逆解析手法の抜本的見直しを行い,新たな逆解析理論とその手法を構築した.今までの逆解析手法(応力逆解析)は,歪増分を入力データとした境界値問題を解くことで応力増分を推定する理論に基づいていたが,1)境界地問題の支配条件が「体積歪が体積応力に比例する」という仮定から導かれていること,2)境界値問題の境界条件は列島周辺の応力増分によって決まるためその設定が難しいこと,の二つの問題により,十分な有効性が保障できなくなった.特に2)は深刻であり,地域によっては,推定された応力増分の値が境界条件に大きく依存して変わる場合があった.新しい逆解析理論(弾性逆解析)は,この二つの問題を解決するべく,列島各地域の弾性係数を推定するものである.弾性逆解析の特微として,1)電子基準点を頂点とする多角形領域を対象とし局囲と切り離して解析することで,未知の弾性係数の数を大幅に削減し解析の効率化を図ったこと,2)剛体回転・剛体移動という剛体変形を考慮することで,力学的に妥当な拘束条件を付け計測誤差の除去を図ったこと,3)弾性係数は拘束条件付の非線形最適問題の解として与えられるが,この最適問題を解析的に解くことに成功したこと,が挙げられる. 弾性逆解析のコード化を行い,モデル問題の数値シミュレーションによって妥当性を検証した,この検証を基に,GPSデータを用いた列島の地域弾性係数の推定に関して,適用可能性や数値計算可能性に関する基礎的な検討を行い,良好な結果を得ている.
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