研究概要 |
平成15年度は地殻変動モニタを開発した.このモニタは,10前後のGPSネットワーク電子基準点を含む地域に対し,計測されたデータから歪場の増分を計算し,釣り合い式を満たすよう,地域弾性係数とそれに伴う応力場の増分を推定するものである.モニタが対象とする領域は比較的小さいため,変位・応力場はテイラー展開を使って多項式で近似することができる.したがって解析は二つの手順を踏む.最初に,基準点で計測された変位増分のデータから変位場を推定する.次に,釣り合い式を満たすという拘束条件のもとで,計測データの誤差が最小となるように,弾性係数を推定する. 数値シミュレーションによって,構築されたモニタリングの方法の妥当性を検証した.離散的に計測されるデータに含まれる誤差を陽に取り扱っているため,安定した数値解析が可能である.すなわち,誤差の大きさに応じて,推定される弾性係数,および,その結果推定される応力場の増分の確からしさが変化する.また,誤差が含まれるにもかかわらず,データ数が増えるほど推定される弾性係数の信頼度が向上する. 1998年以降に計測されたGPSデータに開発された地殻変動モニタを適用し,有効性の検証を試みた.簡単のため,等法性を仮定して,地域のポアソン比の推定を行った.他に比べ計測データの変動が大きい地域ではポアソン比を推定することはできなかったが,それ以外の地域では0.2から0.3の間でポアソン比の推定が可能であった.この値はS波とP波の速度比から推定されるポアソン比と調和的である.なお,推定できない地域を除けば,列島の多くの部分では,ポアソン比はほぼ一様の値をとるか滑らかに変化するかのどちらかであるが,空間的に急変する地域もある.今後のモニタリングの結果が期待されるところである.
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