研究概要 |
超臨界流体中では,圧力を制御することによって溶媒としての強度を変化することができる.本研究では,超臨界流体を溶媒とする系で同位体効果を発現するとともに,超臨界流体の圧力を制御することで,溶媒和による同位体効果を最大化する手法を開発することを研究目的とした.超臨界流体として超臨界二酸化炭素を,同位体としてリチウム同位体を用いて,同位体分離に関する実験研究を行った. 超臨界二酸化炭素と液相または固相との相平衡における同位体効果を発現するためには超臨界二酸化炭素にリチウムまたはリチウム化合物を溶解し,液相(水相または有機相)または固相(環状化合物を固定化した樹脂等)との相平衡を実現する必要がある. これらの組み合わせを海外共同研究者である米国アイダホ大学ウァイ教授と共同して検討した.米国では水溶液中のリチウムとクラウンエーテルを溶解した超臨界二酸化炭素間の相平衡におけるリチウムの平衡分配係数の測定を行ない,NMR測定によってリチウムの分配が水の分配によって大きく影響されることを確認した. 研究代表者らは,日本において,塩化リチウムのメタノール溶液を超臨界二酸化炭素に溶解した超臨界流体を移動相とし,クリプタンド(2B,2,1)を固定化した樹脂を固定相とし置換クロマトグラフィーを構成することを提案した.リチウム濃度が0.5mol/lである塩化リチウムのメタノール溶液と超臨界二酸化炭素の相互溶解度を測定し,メタノールと二酸化炭素のモル比が1:1であれば,7MPa以上で均一な移動相を実現できることを確認した.また,提案した系でブレークスルー法による置換クロマトグラフィー実験を行い,同位体効果が発現できることを発見するに至った.この系でのリチウム6と7の平衡分離係数は10MPaで1.012±0.008であった.
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