研究課題/領域番号 |
13308030
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福岡 正人 広島大学, 総合科学部, 教授 (70117232)
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研究分担者 |
佐藤 高晴 広島大学, 総合科学部, 助教授 (90196246)
北川 隆司 広島大学, 大学院・理学部研究科, 助教授 (70112167)
小野寺 真一 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50304366)
於保 幸正 広島大学, 総合科学部, 教授 (80152560)
開發 一郎 広島大学, 総合科学部, 教授 (60160959)
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キーワード | 物質循環 / 速度論 / 環境劣化 / 岩石 / 水 / 生物 / 酸性化 / 風化 |
研究概要 |
本研究では、瀬戸内海及び沿岸流域の持続的利用のために、酸性雨、温暖化、山火事、人為的撹乱(窒素負荷)などの環境変化にともなう物質循環の変化(土壌劣化、酸性化、富栄養化、重金属流出)を予測し評価することを目的として、瀬戸内流域における自然の物質循環速度及び土壌劣化速度をモニターし、その過程を明らかにした上で、今後の変化予測を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 1.山火事流域における植生の生長速度及びリターの貯留量変化とともに、土壌浸食及び養分流出過程を明らかにした結果、山火事直後の2年間程度で通常の森林流域の数10倍以上の養分流出が起こり土壌劣化することが予測された。 2.流域試験、室内実験、レビューにより、鉱物レベルから山体レベルまで異なるスケールで以下のような風化過程と速度を明らかにするとともに、酸性雨による塩基流亡(酸性化)の影響を確認した。(1)数万年オーダーの不均一な深層風化機構を推定した。(2)花崗岩の物理的風化過程としてマイクロシーティング構造の特性を確認した。(3)個々の鉱物レベルでの風化速度は、流域での速度に比べて大きく、それには有機物の影響が関与していることを確認した。(4)花崗岩山地における塩基の流出過程を明らかにし、降水量の多い年には森林流域においても酸性雨による酸性化が進むことが明らかになった。 3.大気降下性の重金属の流域における挙動を確認し、土壌劣化(酸性化)とともにその流出量が増加することを明らかにし、また、源流域では溶存態で流出するのに対して、流下とともに懸濁物質に吸着して輸送されることが明らかになった。溜池及び砂防ダムにおける堆積物,堆砂量をもとに土壌侵食速度、養分流出量の変動とともに、渓流水の酸収支をもとに酸性化速度を確認した。 4.人為的な窒素負荷の影響は、涵養域の地下水中及び河川中での硝酸濃度の上昇に寄与し、特に海洋への負荷は河川を通して生じていることが明らかになった。一方、地下水から海洋への負荷は、流出直前のハイポレーイック帯(塩淡水混合場)で窒素が浄化されるため、ほとんどないことが確認された。
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