研究課題
遺伝暗号の発見から40年余、3通りの終止コドン解読の仕組は今日まで謎に包まれてきたが、ようやく我々の研究によって解離因子と命名された制御タンパク質がtRNAを擬態し、ペプチド製のアンチコドンを使って終止コドンを識別するという仕組が明らかになった。この発見は、翻訳制御因子の結晶構造解析とも相まって、タンパク質とRNAという異なる生体高分子間の分子擬態という新しい概念を生み出した。さらに、酵母の解離因子のサブユニットには、動物のPrP(プリオン病の原因タンパク質)と同様なペプチドリピートがあり、プリオン様の特徴を示すため、本研究では分子擬態とプリオン特性の両面から翻訳終結因子の研究を実施し、次の研究成果を明らかにした。1)真核生物の2型解離因子eRF3の結晶構造を分裂酵母eRF3を持ちいて世界で初めて明らかにした。通常のGタンパク質と異なり、GTP/GDP間でコンフォメーションの変化は観察されなかった。1型解離因子eRF1の結合部位を変異体の活性測定により明らかにした。2)eRF3のプリオン化領域の一部がeRF1結合部位をマスクする立体構造が明らかになった。3)ペプチド解離後のリボソーム複合体は再生因子(RRF)と翻訳伸長因子EF-Gの働きにより解体・再生される。RRFタンパク質はtRNAと構造が酷似するため、RRFはtRNAの同じリボソーム部位にエントリーして、tRNAと同様にEF-Gによってリボソーム上で押されて移動し、複合体から解離するというモデルが梶らによって提唱されていた。しかし、EF-GのtRNA転移機能不全変異はRRFの機能に何ら障害を起こさず、モデルの誤りを証明した。さらに複合体形成後の解離反応に働く中心的なアミノ酸領域を特定した。4)プリオン「株」の違いがプリオン化領域のコンフォメーションの違いとして安定に複製電波・伝搬することを証明し、Conformational Memory概念を提唱した。
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