小胞体品質管理機構には、正しいフォールディングを促進するproductive foldingが行われる他に、もし変性タンパク質が蓄積されると、1)分子シャペロンを合成誘導して、変性タンパク質の再生を促す、2)作っても変性タンパク質ができてしまう状況下では、多くのタンパク質の翻訳を停止して、変性タンパク質の量を減少させる、3)変性したタンパク質を分解処理する、4)アポトーシスによって、変性タシパク質を生じるような細胞ごと死滅させる、という4つの戦略を備えている。 当研究室では小胞体品質管理機構に関与する2種の新規分子シャペロンについて研究を進めてきたが、この3年間のあいだに、以下の成果を得た。 小胞体関連分解を通じて、新生タンパク質の品質管理機構に関わる新規タンパク質EDEMは小胞体膜に局在するタンパク質であり、Mannose8型糖鎖を特異的に認識し、分解されるべき基質タンパク質の分解を促進する。EDEMは、小胞体中の別のシャペロン・カルネキシンと相互作用し、ミスフォールドしたタンパク質のみを特異的に認識して分解へまわすことを明らかにした。また、EDEMの相同遺伝子をさらに2種発見し、その機能解析を進めた。 小胞体におけるコラーゲンのproductive foldingに関与する分子シャペロンHSP47について、その機能解析を行った。HSP47をノックアウトすると、コラーゲン繊維を形成するI型コラーゲンの3重らせん構造形成に異常が起こる他、動物の発生に基本的に重要な基底膜形成に重要な役割をもつIV型コラーゲンの分子成熟にも異常が起こり、HSP47がコラーゲンのなかでもっとも重要なI型およびIV型コラーゲンの形成に必須の役割を担っていることを明らかにした。
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