研究課題/領域番号 |
13308049
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊吹 謙太郎 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (00273524)
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研究分担者 |
速水 正憲 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (40072946)
三浦 智行 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (40202337)
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キーワード | SHIV / 病原性 / 粘膜感染 / 感染初期 / 腸管免疫 |
研究概要 |
本研究では病原性、非病原性SHIVの感染後の体内定着・増殖部位と組織病理学的変化を比較解析し、その病態形成の違いが何に起因しているのかを明らかにする事を目的としている。昨年度までに、経直腸感染で病原性を示す強毒SHIV分子クローン(C2/1)が、アカゲザルへの感染後3日までに全身へ拡散し、その後リンパ系臓器では盛んに増殖するが、腸管では感染はするものの殆ど増殖しないことや、CD4陽性T細胞は末梢血で急激に減少するだけでなく胸腺や腸管粘膜でも減少し、特に腸管ではCD4CD8共陽性T細胞の減少が先だって顕著に起こっている事を明らかにした。今年度は、C2/1と同じ親株由来で、3年以上の経過観察でもエイズ症状を引き起こさない弱毒分子クローン(cl64)をアカゲザルに経直腸感染させ、その感染初期におけるウイルス拡散および腸管粘膜免疫応答をC2/1感染ザルと比較し、感染初期の免疫細胞群の動態の差異とその後の病態形成との関係について検討した。cl64感染ザルでは血漿中ウイルスRNA量の変動と血中CD4陽性T細胞の減少はC2/1感染ザルとほぼ同様であった。しかしながら全身へのウイルス拡散はC2/1に比べて遅く、ウイルスの主要な増殖部位は感染局所である腸管から、腸間膜リンパ節、胸腺へと段階的に移行する事が示された。腸管では、C2/1感染ザルで見られたようなCD4CD8共陽性T細胞のCD4陽性T細胞に先立つ減少は認められず、感染後27日目でもCD4CD8共陽性T細胞は維持されていた。また、CD4陽性T細胞の著しい減少は小腸に限られていた。以上からcl64感染ザルでは感染初期において、腸管の免疫細胞のポピュレーションがC2/1感染ザルとは大きく異なることが明らかとなった。これらのことから、ウイルス感染初期の腸管での免疫細胞群の動態が、その後の病態に大きく影響することが考えられた。
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