研究概要 |
(1)マウスES細胞由来核移植卵は高率に胚盤胞へ発生するが、受胚雌へ移植後の産子への発生率は低い。核移植卵由来胚盤胞の細胞数は少ないことが知られていることから、2つの核移植卵を集合することによって、1回核移植あるいは再核置換を行った場合に比べて胎子への発生率が向上するか否かを検討した。胚盤胞への発生率は1回核移植区で59%、再置換区で63%、集合区で60%と大差は見られなかった。受胚雌への移植結果では、集合胚の着床率(53%)は他区(29,37%)に比べて有意に向上したが、胎子への発生率は向上しなかった。このことから、ES細胞由来核移植卵の産子への発生率が低い原因は、細胞数が少ないためではないことが判明した。 (2)産子が分娩直後に死亡する原因を明らかにするため、死亡直後のマウスを固定し、パラフィン切片を作成して主要臓器の形態を対照胚と比較検討した、その結果、肝臓の門脈系の発達異常や、肺の実質、間質の肥大等の器官形成異常が認められた。また、英国のSurani博士より供与されたプローブを用いて、ES細胞由来マウスにおけるインプリンティング遺伝子(H19,Peg1)の発現を解析したが、個体への発生能との関係で明確な結果は得られなかった。
|