研究課題
基盤研究(A)
(1)真核生物の起源は、真正細菌と分岐した古細菌から分岐したと考えられていた。研究代表者篠沢のグループは多数の遺伝子情報の類似性をその類似度に従い、比較選別する新たな方法であるホモロジーヒット法を開発し、真核生物の出現は真正細菌への古細菌の共生である(核共生説)事を解明した(Nature Cell Biology, 2001)。更に、形質膜遺伝子等も真正細菌由来である事を解明した(Genes Genet.Syst.2002年)。(2)出芽酵母やセンチュウ、ドロソフィラなどの真核生物の遺伝子と50数種類の古細菌と真正細菌の、FASTAプログラムにより、オルソロガス遺伝子の数に基づく系統樹を作成した。それに基づき核共生に関与した古細菌(パイロコッカス)と真正細菌(プロテオγ)を同定した(Journal of Molecular Evolution 2004年)。(3)核共生機構の解明には、微生物間の正確な系統樹が必須である。リボソームRNA(小サブユニット)の系統樹を1000種類自動作成するプログラムを作成し、正確な系統樹を作成した。とりわけ進化的位置が不正確であったシアノバクテリアの位置を決定した(2003年日本分子生物学会年会。論文作成中。)。(4)核共生に伴う遺伝子選別の痕跡を想定してゲノムDNAのイントロンおよびエキソンにおけるGC含量の相関関係を解析した(Genes Genet.Syst.2003年)。(5)核共生を可能にした重要な遺伝子として、ストレスタンパク質及び活性酸素処理(スーパーオキシドジスムターゼ、SOD、及びカタラーゼ)遺伝子に焦点を当てた。ストレスタンパク質のデータベースの作成とインターネット上の公開を行った。更にストレスタンパク質のメイン構造等による、新規命名法を論文化した(In Silico Biology, 2004年)。(7)好塩性菌カタラーゼを、大腸菌で大量生産した。更に遺伝子工学的に熱安定なキメラ酵素を作成した(Biosci.Biotechnol.Biochem.2004年)。(8)細胞共生に関し、ユニークな生物であるゾウリムシからFe-SOD遺伝子をクローニングし、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)データベースに登録した(AB164196)。(9)ホモロジーヒット解析は、求人求職情報等大量な情報を比較解析選別するのにも有用である。工業所有権の出願を国内(20001-183856)とアメリカ・カナダ(PCT出願)に行った。(10)上記以外では、真核生物におけるコドン使用頻度とtRNA遺伝子やタンパク質合成の効率の解析や大腸菌ゲノムに於ける繰り返し塩基配列の解析等を行った。
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