地中海世界における文化融合と文化対立-民族主義と多文化主義のゆくえ-

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13309007
• 研究機関: 一橋大学
• 研究代表者: 加藤 博 一橋大学, 大学院・経済学研究所, 教授 (10134636)
• 研究分担者: 立石 博高 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (00137027) ; 斎藤 寛海 信州大学, 教育学部, 教授 (00020628) ; 竹内 啓一 駒澤大学, 文学部, 教授 (00017617) ; 大月 康弘 一橋大学, 大学院・経済学研究所, 助教授 (70223873) ; 臼杵 陽 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (40203525)
• キーワード: 地中海世界 / 国民国家 / 複合文化社会 / ヨーロッパ / アラブ社会 / イスラーム / キリスト教世界 / ナショナリズム

研究概要

本研究は3年計画として推進される。2年次である平成14年度には、「地中海世界での文化融合の諸相」という総合テーマのもと、13年度の研究テーマであった「独自の生態系と文化体系をもつ複数の地域を結びつけるに重要な役割をはたした島」に注目しつつ、地中海世界での文化融合の諸相を分析する。具体的なテーマとしては、食糧とひとの移動、生存システム(ものの生産、流通、分配、消費)、秩序システム(広域文明と多文化主義)などである。それを、「長期持続」の観点から、文化融合と文化対立の背景になった生態系、基層文化を中心にしたイデオロギー体系、などについて分析した。
この作業は、地中海世界各地における生態系と文化体系との関係、またその長期的タイムスパンでの変化の分析を含んでいる。そして、ここでの文化とは、精神文化のみならず物質文化をも含意している。この認識により、具体的なテーマとして、(1)生態系と定住形態(都市と農村)、(2)生態系と経済生活、(3)生態系と技術水準、(4)生態系と文化生活(土着文化と広域文明)等を取り上げた。
主要研究活動は、月一回(原則として第三日曜日)一橋大学で開催される定例研究会、また、国内外の研究者を招いての特別講演、ワークショップを中心に遂行された。その中で、研究代表・分担者は各自の研究分担課題を深めるとともに、討論の過程で成果の総合化を図った。
研究代表・分担者の役割分担は以下の通りである。西地中海地域(スペイン、モロッコ)世界の構造的特徴(栗原尚子、竹中克行、堀内正樹)、中地中海地域(イタリア、チュニジア)世界の構造的特徴(竹内啓一、藤沢房俊、斉藤寛海、亀長洋子、勝田由美)、地中海・アフリカ地域(エジプト、スーダン)世界の構造的特徴(加藤博、長沢栄治、大稔哲也、上田元)、東地中海地域(ギリシア、トルコ、シリア・レバノン・イスラエル、パレスチナ)世界の構造的特徴(大月康弘、臼杵陽、黒木英充、阿曽村智子、青山弘之)、地中海・スラブ地域(バルカン・スラブ諸国)世界の構造的特徴(坂内徳明、中島由美)。
なお、マルタ大学教授ブリゴリオ氏、サルディニア大学講師マルマンゲ氏とは、準共同研究員として緊密な意見交換を行った。平成14年夏にサルディニアで本研究テーマ(地中海世界における生態系と多文化主義)に関する国際ワークショップを開催した。

研究成果

• [文献書誌] 加藤 博: "エジプトにおける「近代統計」と国民国家形成"現代の中東. 34号. 173-185 (2003)
• [文献書誌] Hiroshi, KATO: "Islam and Development"Technology and Development, January 2003, JICA. 5-7 (2003)
• [文献書誌] 加藤 博: "近代イスラームにとってのヨーロッパ"別冊 環(5)「ヨーロッパとは何か」藤原書店. 260-267 (2003)
• [文献書誌] 加藤 博: "イスラム史は何を明らかにしたか"歴史評論. 630号. 52-62 (2002)
• [文献書誌] 加藤 博: "世界経済史におけるイスラームの位置"社会経済史学会編『社会経済史学の課題と展望』(社会経済史学会創立70周年記念). 10. 157-169 (2002)
• [文献書誌] 加藤 博: "イスラムと開発"国際協力研究(国際協力事業団). 18巻1号. 51-66 (2002)
• [文献書誌] 加藤 博: "近代のアラブ社会"佐藤次高編『西アジア史I アラブ』新版世界各国史、山川出版社. 16. 395-451 (2002)
• [文献書誌] 加藤 博: "グローバリゼーションと多文化共生-文明間の対話に関する考察(ハサン・ハナフィー氏との対談)"国際交流. 16-27 (2002)
• [文献書誌] TAKEUCHI, Kei-ichi: "El pensamiento geografico en los libros agronomicos del Japon moderno. Vincent Berdoulay y Hector Mendoza Vargas(ed.) "Unidad y diversidad delpensamiento geografico en el mundo. Retos y prospectivas""UNAM-Instituto de Geografia (Mexico). 195-207 (2003)
• [文献書誌] 堀内正樹: "モロッコの陶器:フェズ焼きとサフィー焼き"月刊みんぱく(国立民族学博物館). 2002年9月号. 1 (2002)
• [文献書誌] 立石博高: "『スペイン王国』成立に関する一考察--バルセローナ市への異端審問制度導入をめぐって"渡辺節夫編『ヨーロッパ中世の権力編成と展開』、東京大学出版会. 335-356 (2003)
• [文献書誌] 立石博高: "宮廷芸術の誕生--近世スペイン"樺山紘一編『表徴と芸能』(「講座 天皇と王権を考える」第6巻)、岩波書店. 219-244 (2003)
• [文献書誌] 三浦 徹: "人と都市とネットワーク:イスラーム史における地域"国家像・社会像の変貌:現代歴史学の成果と課題 1980-2000年II 青木書店. 208-222 (2003)
• [文献書誌] 三浦 徹: "書評 ジェームス・A・レイリー著『シリアのある小都市:オスマン時代 18-19世紀のハマー』"東洋学報. 第84巻第2号. 81-88 (2002)
• [文献書誌] 大稔哲也(OTOSHI, Tetsuya): "Muslims and Copts as Reflected in the Ziyara Books and Qarafas"Islam in the Middle Eastern Studies : Muslims and Minorities, eds. A. Usuki & H. Kato, JCAS Symposium Series 7. 27-51 (2003)
• [文献書誌] 大稔哲也: "アラビア文字の世界"文字をよむ 池田紘一・今西祐一郎編、九州大学出版会. 145-160 (2002)
• [文献書誌] 大月康弘: "ビザンツ帝国租税制度覚書"文部省科学研究費補助金特定領域研究(A)「古典学の再構築」『伝承と受容(世界)班研究論文集』. 35-42 (2003)
• [文献書誌] 大月康弘: "10-11世紀ビザンツ社会のカリスティキア-教会施設管理の俗人委託慣行と国家権力-"ヨーロッパ中世の権力編成と展開(渡辺節夫編、東京大学出版会. 15-33 (2003)
• [文献書誌] 大月康弘: "リウトプランド968年ミッションの目的と齟齬-10世紀キリスト教世界における「ローマ皇帝」問題に向けて-"西洋史研究. 新輯第31号. 74-104 (2002)
• [文献書誌] 大月康弘: "ブローデル後の地中海史研究"社会経済史学の課題と展望(社会経済史学編、有斐閣刊). 75-88 (2002)
• [文献書誌] 大月康弘: "ギリシャ正教徒にとってのコンスタンティノープル"アジア遊学(勉誠出版). 第49号. 2-10 (2003)
• [文献書誌] 大月康弘: "祝祭都市・コンスタンティノープル"地中海の祭りと暦(地中海学会編、刀水書房). 246-247 (2002)
• [文献書誌] 竹中克行: "現代カタルーニャの職業集団編成における流入者の役割(その2)"愛知県立大学外国語学部紀要(地域研究・国際学編). 第35号. 139-152 (2003)
• [文献書誌] 加藤 博: "イスラム世界論-トリックスターとしての神"東京大学出版会. 227+23 (2002)
• [文献書誌] 竹内啓一: "伝統と革新:私が選んだ99の地理学"古今書院. 400 (2003)
• [文献書誌] 立石博高(編著): "スペインにおける国家と地域--ナショナリズムの相克"国際書院. 294 (2002)
• [文献書誌] 斎藤寛海: "中世後期イタリアの商業と都市"知泉書院. 478 (2002)