土壌の環境浄化機能の極限値の探求

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13309012
• 研究機関: 島根大学
• 研究代表者: 若月 利之 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (50127156)
• 研究分担者: 和田 晃 藤井基礎設計, 研究員 ; 増永 二之 島根大学, 生物資源科学部, 講師 (10325045)
• キーワード: FISH法 / PCR-DGGE法 / 有機物循環速度 / バイオジオフィルター / 土壌トレンチ法 / 多段土壌層法 / 浄化機能の極限値 / 土壌圏の生態工学

研究概要

多段土壌層法を用いて我々がこれまで実現できた土壌の環境浄化機能の持続的な(1週間程度の瞬間値ではない)最大値はC : N : P=2400:240:30t/ha/y(660:66:8g/m^2/日)であり、さらなる改良により極限値はC : N: P=4000:400:40t/ha/y程度は可能と推定される。茶園や野菜園等、すでに環境問題を引き起こしている循環速度の100倍以上の極限浄化速度が推定される。土壌による有機性物質の分解と浄化の場は多様な物理的構造と孔隙分布及び多様な化学的性質を持つ土壌団粒の内外にある。多段土壌層法では、この団粒の発達程度の異なる土壌の利用に通気条件を組み合わせると、外表面通気-未通気系(単粒の粘土やシルトや砂等が多い団粒未発達のマサ土等)、内表面通気-未通気系(黒ボク等の団粒が発達)等、多様な好気嫌気条件を生み出せる。又、団粒の親水性と疎水性は腐植物質の質と量、粉末木炭や活性炭の添加等で制御できる。かくして極めて多様な物理化学性を持つ団粒の場(微生物コンソーシアの活動する場)を作り出すことができる。このため、難分解性の農薬や環境ホルモンやテトラクロロエチレン等の分解機能を向上させることもできる。
結論
(1)土壌の分解浄化機能の極限値は生物生産(支持)機能に比べて、何故このように格段に大きいのであろうか?その機構を解明するには土壌団粒の物理性と化学性を生物性と関連づけて理解する必要があることは明らかである。
(2)その生態学的意義は何か?生産に比べて、浄化分解機能に余裕があることは生態学的にどのような意義があるのであろうか?
(3)今後は多段土壌層法で上記のような極限値を示す条件下での優先的微生物群集をFISH法とPCR-DGGE法により同定する予定であり、そのための予備的検討を行った。

研究成果

• [文献書誌] 若月利之: "西アフリカにおける持続可能な水田農業開発に関する研究"日本土壌肥料学雑誌. 73(3). 249-252 (2002)
• [文献書誌] 後藤逸男, 若月利之, 中崎清彦, 上田成子, 羽賀清典, 斎藤雅典: "土壌生物圏はどこまで有機物資源をリサイクルできるか"日本土壌肥料学雑誌. 73(6). 777-781 (2002)
• [文献書誌] Sato, K., Iha, Y., Luanmanee, S., Masunaga, T., Wakatsuki, T.: "Long term on-site experiments and mass balances in waste water treatment by multi-soil-layering system"The 17^<th> World Congress of Soil Science, Abstracts. 5. 1673-1673 (2002)
• [文献書誌] Masunaga, T., Sato, K., Wakatsuki, T.: "Environmental remediation using purification function of soil by multi-soil-layering system"The 17^<th> World Congress of Soil Science, Abstracts. 5. 1667-1667 (2002)
• [文献書誌] 若月利之: "西アフリカにおける自立的展開が可能な小規模谷地田開発"農業土木. 70(11). 999-1004 (2002)
• [文献書誌] 若月利之: "西アフリカの農民と共に行う水田作りと里山作りへの招待"ARDEC. 25. 9-18 (2002)
• [文献書誌] Hirose, S., Wakatsuki, T.: "Restoration of Inland Valley Ecosystems in West Africa"Norin-Tokei-Kyokai. 600 (2002)