球形晶析法による難吸収性薬物送達のためのナノ粒子の設計と機能発現の体系化

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13309013
• 研究機関: 岐阜薬科大学
• 研究代表者: 川島 嘉明 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (30082978)
• 研究分担者: 山本 浩充 岐阜薬科大学, 薬学部, 助手 (30275094) ; 竹内 洋文 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教授 (50171616)
• キーワード: ポリ乳酸・グリコール酸 / 共焦点レーザー走査顕微鏡 / 肺上皮癌細胞 / 原子間力顕微鏡 / ポリスチレンナノスフェア / ナノスフェア / 関節注射用徐放性製剤

研究概要

1)ナノ粒子システムと生体との相互作用解析
ヒト肺上皮癌細胞A549を用い、微粒子取り込み様式を共焦点レーザー走査顕微鏡により観察した。その結果、ポリスチレンナノスフェア(PSNS)の取り込み量は、粒子径の増大に伴って減少した。エンドサイトーシス阻害剤(サイトカラシンB)をPSNSと併用投与し、肺粘膜透過性を評価したところ、サイトカラシンB併用により有意にA549細胞への取り込み量が減少した。
粒子表面と生体成分との相互作用を、ムチン膜と高分子で表面修飾したプローブを用いて原子間力顕微鏡により評価した。キトサンで修飾したプロープは、PLGAで修飾したプローブに比べ、ムチン膜との間に強い吸引力が働いた。
2)粒子径と表面物性が制御されたナノ粒子システムの細胞親和性、マクロファージ被貪食性
関節注射用徐放性製剤としてPLGAナノスフェアを用いたシステムを設計した。リン酸ナトリウムベタメタゾン(BSP)を内封したナノスフェアと薬物溶液を、炎症を惹起させたウサギの関節に投与したところ、溶液投与群では関節の膨潤が抑制できなかったのに対し、ナノパーティクル投与群では40日に渡り有意に膨潤を抑制することができた。さらに、細胞への貪食作用及び毒性について検討を加えた結果、生体分解性の高分子を用いるPLGA微粒子キャリアーは、同じ素材でも粒子径が異なることによってin vitro安全性(L929細胞毒性)が異なることを明らかにした。この際、微小なPLGAナノスフェアではL929cc11に食食され,PLGA分解が促進されることを推察した。また、リドカインを封入したナノスフェアでは,動物モデルにおける浸潤麻酔作用の延長が認められたが、リドカイン封入マイクロスフェアでは動物への投与自体ができなかった。

研究成果

• [文献書誌] E.Horisawa, K.Kubota, I.Tuboi, K.Sato, H.Yamamoto, H.Takeuchi, Y.Kawashima: "Size-Dependency of DL-Lactide/Glycolide Copolymer Particulates for Intra-Articular Delivery System on Phagocytosis in Rat Synovium"Pharm.Research. 19. 132-139 (2002)
• [文献書誌] E.Horisawa, T.Hirota, S.Kawazoe, J.Yamada, H.Yamamoto, H.Takeuchi, Y.Kawashima: "Prolonged Anti-Inflammatory Action of DL-Lactide/Glycolide Copolymer Nanospheres Containing Betamethasone Sodium Phosphate for an Intra-Articular Delivery in Antigen-Induced Arthritic Rabbit"Pharm.Research. 19. 403-410 (2002)
• [文献書誌] 山本浩充, 竹内洋文, 川島嘉明: "粒子物性制御による微粒子ドラッグデリバリーシステムの機能設計"Drug Delivery System. 17. 231-239 (2002)
• [文献書誌] 堀沢栄次郎, 岩崎勝秀, 肘黒恒志, 竹井弘, 山本浩充, 竹内洋文, 川島嘉明: "局所投与を目的としたPLGA微粒子キャリアーの細胞毒性と貪食作用に及ぼす粒子径の影響及び薬理効果に関する研究"薬剤学. 62. 189-202 (2002)
• [文献書誌] 川島嘉明, 竹内洋文, 山本浩充: "微粒子工学大系 第II巻応用技術"フジ・テクノシステム. 7 (2002)