研究概要 |
本研究の最も中心的な課題は、パーソナリティや認知能力に代表される人間の高次精神機能の個人差におよぼす遺伝の影響を、双生児法によって明らかにすることである。 本年度の研究実施・運営上の主な実績は以下の通りである。 (1)双生児レジストリの拡大:神奈川県、千葉県を中心に住民基本台帳から地域の双生児の悉皆的住所調査を行って住所リスト(レジストリ)を拡大し6500組のデータを得た。 (2)双生児サンプルの拡大と維持:上記のレジストリに基づいて調査への参加を呼ぴかけ、新たに約300組の青年期双生児の新サンプルを得、双生児被験者の数は600組を超した。 (3)データの追加と収集:旧サンプルの約30組から、新たに事象関連電位、作動記憶、情報処理測度、個別式知能検査(WAIS)のデータを、また新サンプルからは質問紙による卵性診断、NEO-PI-R, TCI(パーソナリティ), HADS, SUBI(精神的健康度), EDI(摂食障害), PBI(親子関係)、杜会性尺度などのデータを入手した。 (4)脳波解析プログラムの開発、脳波測定環境の改善:現在の測定状況に適合した特別の脳波解析プログラムを開発すると、正確な脳波測定のためにシールドルームを設置した。 以上の活動に基づき、現時点で得られた成果には以下のようなものがある。 (1)パーソナリティの遺伝構造モデルの確証:新奇性追求、損害回避、報酬依存の3気質が遺伝的に独立な第一次構造であり、いわゆるBig Fiveやうつや摂食障害(に関連する健常者の傾向)の個人差などは、一次的遺伝的パーソナリティ要因とその表現型に特殊や非共有環境によるものであり、これらの疾患に特殊な遺伝的素因、あるいは特殊な家庭環境によるものとはいえないことを示すモデルを導出した。 (3)事象関連電位(P300)と作動記憶、情報処理速度にわずかな遺伝的相関があることを示した。
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