研究課題/領域番号 |
13354004
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮島 英紀 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70166180)
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研究分担者 |
増田 宏 東英工業(株), 磁性課, MDリーダー
齊藤 英治 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (80338251)
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キーワード | 磁気測定 / ナノ磁性 / 走査型顕微鏡 / ホール効果 / マイクロホール素子 / 磁区観察 / 磁場分布 / マイクロマグネティックス |
研究概要 |
微小強磁性体の磁気モーメントの大きさと分布を観測することは、磁気物理の重要な課題のひとつである。この走査型ホールプローブ顕微鏡(SHPM)は、磁性体表面の空間磁気分布をマイクロホール素子を用いて観察するものであるが、マイクロホール素子は、低温、強磁場中でも高感度で磁場を検出できるため、試料に強磁場を印加した状態で、安定した測定が期待できる。本年は低温強磁場中で測定可能なSHPMの開発を行った。昨年度までに開発した高分解能走査ステージは、ピエゾ素子や強磁性体を走査機構に用いたため、低温、強磁場下で安定した微細走査ができない問題点があった。そこで、走査機構を再設計・製作し、走査ステージは、非磁性のステンレスを用いた。また、走査駆動部を電磁石の間隙および、クライオスタッドの外側に設置し、これと走査ステージを動力伝達棒で結ぶことで、試料の温度、印加磁場によらず安定した走査ができるようにした。製作した装置は、1ミクロン以下の精度で試料を走査できることを確認した。本研究の当初は、マイクロホール素子としてGaAs/AlGaAs基板を用いたものを考えていたが、海外メーカーから入手できなくなったことに加え、機械的に脆く汎用プローブチップとして使用するには適さないことがわかった。そこで機械的強度に優れるSi基板上に、MOSFET構造を形成させたSi-MOSFET型ホールプローブを試作しSHPMへの応用を検討した。p-Si基板上にホールバー形状のゲート電極を有したn-channel型MOSFETを形成した。室温、ゲート電圧=1Vにおいて、±12kOeの間の磁場で、一定のホール係数=0.18Ω/Gを示した。これは、既存のマイクロホールプローブと同性能であり、Si-MOSFET型ホールプローブの有効性を示しているものと考えられる。 このSHPMは、微小磁性体や永久磁石などの表面磁気構造を様々な外部磁場で測定することができ、磁化反転過程における磁区、磁壁の振る舞いの解明に不可欠なツールである。
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