研究課題
2年目は、高周波Wバンドパルス装置の最重要部分であるマイクロ波ブリッヂの完成とcw時間分解ESR信号の観測による周辺機器の整備をめざした。結果は、以下のとおりである。1.昨年度の性能チェックの段階で、最大出力250mW、最小パルス幅10nsに問題があったので、ブリッヂの設計を変更・改良して、これらの性能を実現させた。装置の時間分解能は、150MHzの帯域を持つプレアンプの導入により、6ナノ秒まで向上させることができた。コンピュータによる装置の自動計測についてもプログラムの作成を行なった。2.光導入部のファイバーについては、新たにファイバー付きのサンプルホルダーを設計・製作したこのホルダーは密閉性も良く、サンプル温度を極低温(4.2K)まで下げることが可能となった。また、サンプル管へのファイバーの出し入れを外部から調節することができるように設計した。これにより、サンプルへの光強度や共振器のQ値を制御することが可能になった。3.フラーレン励起三重項のWバンドESRスペクトルを観測して、試料サンプルの作成法、効率的な光照射の方法を検討した。その結果、サンプルは脱気・封じ切をした後にアルゴン下で開管してファイバーを立て、ホルダーのファイバーと結合させるという最適条件を見出した。亜鉛ポルフィリンについても、初めて溶液中で励起三重項の高周波ESRの広幅信号を観測することができた。
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