研究概要 |
第2年度までにシステム構築したCCDカメラ分光光度計を用いて、種々の実験条件下で光受容タンパク質の光反応解析を行った。その結果、以下の成果を得ることができた。 1.蛍光測定によるタンパク質からの発色団(レチナール)結合・解離過程の解析 ロドプシンのトリプトファン残基に由来する蛍光強度の変化過程を解析することにより、タンパク質からの発色団(レチナール)の結合・解離過程の反応動力学的解析を行うことができる。本研究により開発したCCDカメラ分光光度計は高速かつ高感度で広波長領域の微弱蛍光の検出が可能であるため、このような研究の発展の可能性を模索した。試料の退色量をなるべく減らすために撹拌機能付きの試料セルホルダーを新規に取り付け、ロドプシンの光反応後の蛍光(励起光295nm,測定波長300-500nm)の時間変化を測定した。その結果、吸収分光によって得られた発色団の解離過程とほぼ同じ時間領域で蛍光強度の増加が観測された。また、発色団結合時には、同様に吸収分光によって観測されるのとほぼ同じ時間領域で蛍光強度の減少が観測された。蛍光測定に用いる試料濃度は吸収測定の場合よりも10分の1程度で良いため、発現蛋白質などの発色団結合・解離過程の実時間解析に役立つことが期待される。 2.ロドプシン以外の光受容タンパク質に対する適用 本システムの構築にはロドプシンを試料として用いてきたが、他の米受容蛋白質の研究にも威力を発揮することが期待される。実際、ロドプシンよりも皮応が速い錐体光受容蛋白質や、ロドプシン変異体の測定に、本システムが適用できることがわかった。また、バクテリアや植物の光受容蛋白質についても共同研究により初期の実験をはじめている。これまでの分光装置では得られなかった高時間分解能・高精度の実験結果を得ており、今後の詳細な解析により新たな現象の発見につながることが期待される。
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