研究概要 |
画像表示装置の発光部,発色部としての応用が期待される技術として,シリコンの微小構造の回折・干渉現象を利用した構造色ディスプレイの研究を行った.2ミクロン程度の間隔で配列したシリコンの微細構造によって,蝶の翅における「構造色」と呼ばれる現象と同様の原理によって,観察される色を変化させることができた.この微細構造をマイクロアクチュエータによって駆動する実験を行い,発色を動的に制御できる可能性を示した.複数の薄膜の積層間隔を制御することで透過光のスペクトルを制御する手法についても併せて実験を行った.この手法を用いれば,ディスプレイとしての応用の他,生体における光学的な性質を検出するためのアクティブフィルタとして用いることも可能である. また,3次元立体画像表示装置の研究の応用として,複数観察者へ同時に個別画像情報を提示する研究を行った.この研究は,観察者の位置情報の取得,及び特定方向への個別画像情報提示の二つの要素から構成される.観察者の位置情報の取得については,観察者の位置をディスプレイの前面90度の範囲と想定し,アンテナと観察者が所持する発信機から角度を8通りに分解することができた.発信機の代わりにRFIDタグ等を用いることでより正確な位置情報を取得できるだけでなく,観察者固有の情報,例えばその人が興味を持っているニュース等をその人にだけ提示することが可能となる.一方,特定方向への個別画像情報提示については,前年度までの立体画像表示装置の試作において得られた知見を活用した四眼のレンチキュラー式ディスプレイを設計・製作し,上記位置取得によって得られた方向へ個別の画像情報を提示することができた.観察者の移動に伴う画像情報変更の追従性や,四眼それぞれの境界付近に観察者が位置した時の表示の変更など,実際にアプリケーションとして用いる場合を想定した実験も行った.
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