研究概要 |
本研究では,画像表示装置から出力される光情報を時系列のデータとして扱い,マイクロミラーを動的に制御することでその反射光を空間上に走査する.これにより,観察者の見る画像の解像度を落とすことなく空間分解能を上げることが可能となる.DMDのような反射型のミラーアレイを用いた立体視ディスプレイの研究は既に行なわれているが,反射型の場合光源とミラーアレイを向かい合わせに配置する必要があり,複雑な光学系及び一定以上の光路を確保する観点からシステムが大規模になる傾向がある.一方本研究では,画素と同サイズのマイクロミラーの両面を用いて反射させることで,ミラーアレイの直下に配置した光源からの光を透過させる構造となっている.これによりシステム全体をシンプルに,かつ薄型にすることが可能である. まず,外部磁場,及びローレンツ力により駆動されるマイクロミラーの設計を行ない,ミラー面のサイズが400μmx500μm,厚さが20μmのマイクロミラーを試作した.次に,一対の固定・可動ミラーのペアを用いてレーザ光線を空間上に走査し,多眼化が可能であることを示した.その後,マトリックス状に配置されたマイクロミラーアレイとLEDマトリックス,マイクロレンズアレイ等を組み上げることで,透過型立体視ディスプレイのプロトタイプを試作した.ディスプレイへの見込み角を変化させながら出射される光強度を測定することで,試作したプロトタイプが立体視ディスプレイとして適切な光強度分布を示していることを確認した.さらに,隣り合うミラー同士を逆位相で振動させるなど幾つかの駆動方法を実験し,特徴ある光強度分布が得られることも明らかにした.上記手法では表示画像の解像度を落とすことなく多眼化が実現できることから,このマイクロミラーアレイを大規模に集積することで,高解像度・高分解能な立体視ディスプレイが実現できることが示された.
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