研究概要 |
昨年度の(1)疲労損傷のデータベースの構築および(2)橋梁の疲労損傷・破壊挙動についての検討に引き続き,本年度は,以下の検討を行った. (3)レトロフィッティングの方法とその効果の検討:本年度は,既設鋼橋梁で問題となる面外ガセット継手部の溶接補修方法として,低変態温度溶接材料を用いた付加溶接の効果について,特に,ウェブ板厚,溶接順序,鋼材強度に着目して,大型桁試験体の疲労試験により検討し,JSSC疲労等級でD等級程度まで疲労強度を向上できることを明らかにした. (4)橋梁構造の疲労損傷の予測システム:本年度は,システム構築のために不可欠な疲労損傷とその原因の関係について,特に,鋼製橋脚を有する連続高架橋梁,および,鋼床版箱桁橋梁の疲労損傷について詳細なFEM解析により検討した.その結果,まず鋼製橋脚を有する連続高架橋梁については,支承が腐食により固着し,それが車両の通過に伴い,桁端部の切欠き部では発生する応力範囲が著しく上昇させ,疲労損傷の要因となっていることを明らかにした.さらに,活荷重の作用に伴う,橋梁の3次元的な変形挙動が,桁と鋼製橋脚とを連結するブラケット溶接部や鋼製橋脚隅角部などでの発生応力に影響を与え,疲労損傷の発生要因となっている可能性を示した.一方,鋼床版箱桁橋梁においては,車両の輪荷重が直接床版に作用するため,それが縦リブ間のデッキプレートの著しい局所的な変形を発生させ,その結果,縦リブとデッキプレートとの溶接部に高い集中応力が生じ,これが疲労損傷の原因であること,また,横リブとの交差部ではさらに高い応力集中が発生するとともに,横リブと縦リブの溶接接合部にも,縦リブの変形を抑制する効果のために,高い応力集中生じる可能性があることを明らかにした.その結果から,(3)に関連して,鋼床版箱桁橋梁については,デッキプレートの局所的な変形を抑制するために,その合成を上げる方法として,合成床版化することを提案し,その応力低減効果を示した. (5)既設構造物の材料特性判定方法の開発:本年度は,既設橋梁の溶接補修の可能性について,ラメラティア発生可能性に着目して材料特性面から検討し,鋼材に含まれる硫黄成分が15%以上である必要があることを示すとともに,橋梁の竣工年と鋼材に含まれる硫黄成分との関係を明らかにし,コアを抜き取る前の溶接補修可否の判断の目安も提案した.
|