研究概要 |
本研究では一昨年および昨年度に実施した,(1)疲労損傷のデータベースの構築,(2)橋梁の疲労損傷・破壊挙動の検討,(3)レトロフィッティングの方法とその効果の検討,(4)橋梁構造の疲労損傷の予測システムおよび(5)既設構造物の材料特性判定方法の開発について検討に引き続き,以下の検討を行った. (3)レトロフィッティングの方法とその効果の検討:本年度は,鋼製ラーメン橋脚隅角部の疲労損傷に対する補強方法として,三角リブの後付溶接による取付けを考え,その効果について解析および実構造物の溶接条件や板組み構成などを再現した大型試験体に対する疲労試験により検討した.その結果,リブ取付けによりピーク発生応力を50%低減でき,さらに,疲労損傷の支配的要因である隅角部角部の内在溶接欠陥を取り除かずにリブを取付けた場合でも,疲労強度等級が2グレード向上させることができることを示した.一方,本研究では,面外ガセット溶接継手に対する各種補修方法についても実験的な検討を実施した.その結果,ボルト締めストップボール法の効果が高いことを示し,さらに,グラインダ処理法における仕上げ方法の違いが補修効果に及ぼす影饗を明らかにした. (4)橋梁構造の疲労損傷の予測システム:本年度は疲労損傷の原因となる交通荷重の実態把握のために,新たに,様々な橋梁構造形式に対応した効果的なWeigh-in-motionシステムを新たに開発した.ワーレントラスの鉛直材など短い影響線長を持つ曲げ部材を用いたシステムの有効性を示したほか,光ファイバー通信を用いて継続的に全自動リアルタイム処理が可能なWeigh-in-motionシステムを開発した.これらのシステムにより,過積載車の台数や重量、通過時間帯を特定でき,さらには,それらの情報から道路橋の累積疲労損傷度を定量的に把握することが可能となった.また,落下事故などで問題となっている道路標識柱の疲労損傷の要因について,標識柱の常時微動に基づいた振動特性の把握により,疲労損傷度を評価できる可能性を示した.また,標識柱など比較的小規模な構造物に対するモニタリングの方法として,加速度計と小型電子計算機を組みあわせ,常時微動波形を記録・分析することにより損傷を検知し,それらの情報を無線で簡便に取得できるシステムを提案した. (6)疲労度評価のための構造点検プログラム:本研究では,(1)の疲労損傷事例データベースを基に,発生可能のある疲労き裂の特徴などから,点検の際の検査箇所や検査方法を特定することにより効率的な点検手順を提案した.さらに,実構造物に対する補修実施例をデータベース化したうえで,(3)の成果を踏まえ,補修実施後における点検項目の抽出も行った. (7)既設橋梁の疲労度診断とレトロフィッテイング実施に関する支援システムの構築:常時モニタリングによる既設鋼道路橋の疲労損傷度分析から,疲労損傷の検知・発生予測を行い,それに適した補修方法を選定できるデータベースを組み合わせた維持管理システムを提案した.
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