研究概要 |
途上国での下水処理システムを普及させていくためには,今ある日本の"技術"をそのまま移転すれば事足りるのではなく,地域の経済構造,社会構造等の実状に適した技術を創生しなければならない。このような背景を下に,我々は,低コスト(省エネルギー(エアレーションが不要)・創エネルギー(メタンガス回収))で維持管理が容易な簡易型下水処理プロセスの開発に携わってきた。本提案処理プロセスは,UASB法とスポンジカーテン型リアクターを組み合わせた新規の処理システムで,エアレーション不要・余剰汚泥生虚ゼロの省エネルギー・低環境負荷型であり,クラシックの活性汚泥法に取って代わることが期待できる可能性を秘めており,実用化の歩手前まで来ている。本研究は,実用化のために必要となる,なぜ良好な処理性能を有するのかと云った詳細のメカニズムや実規模サイズの場合に直面する問題点を明らかにすることにある。 ニジェールに建設された新規下水処理システムパイロット・プラントの短期間ではあるが,実下水の連続処理調査を実施し,良好な処理水が得られることが分かった。インドのカナール市に建設されるパイロット・プラントは,インド政府の技術者らと3回の研究打ち合わせを行い,設計図を完成させ,プラント建設が終了した。来年度から実験できる状態に至った。 国内でも下水処理場にミニチュアのプラントを設置し,改良点等に素早く対応できるよう,実下水連続処理実験を実施した。これまでの処理実績は滞留時間8時問であったが,6時間に短縮しても良好に処理出来ることが分かった。また,UASBリアクターで生成したメタンの一部は処理水中に溶存しており,DHSリアクター内でメタン酸化細菌等により酸化されると共にメタンガスは大気中に放散される。解析の結果,メタン酸化細菌による酸化は僅か0.1%しかないことが分かった。
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