研究概要 |
途上国での下水処理システムを普及させていくためには,今ある日本の"技術"をそのまま移転すれば事足りるのではなく,地域の経済構造,社会構造等の実状に適した技術を創生しなければならない。このような背景を下に,我々は,低コスト(省エネルギー(エアレーションが不要)・創エネルギー(メタンガス回収))で維持管理が容易な簡易型下水処理プロセスの開発に携わってきた。本提案処理プロセスは,UASB法とスポンジカーテン型リアクターを組み合わせた新規の処理システムで,エアレーション不要・余剰汚泥生成ゼロの省エネルギー・低環境負荷型であり,クラシックの活性汚泥法に取って代わることが期待できる可能性を秘めており,実用化の一歩手前まで来ている。本研究は,実用化のために必要となる,なぜ良好な処理性能を有するのかと云った詳細のメカニズムや実規模サイズの場合に直面する問題点を明らかにすることにある。 インドのカナール市に建設された新規下水処理システムパイロット・プラントが今年度の5月から稼働し,実下水の連続処理調査を現地にて実施している。1日1000m^3の流量、滞留時間2時間で実下水UASB処理水をポリッシュアップした結果、期待通りの良好な処理水が得られ,スケールアップでの問題点は今のところ見つかっていない。また,インド政府の技術者らと本システムの実機化に向けた研究打ち合わせを行い,来年度も継続して行う予定となった。 国内でも下水処理場に改善したミニチュアのプラントを設置し,実下水連続処理実験を実施した。半年間の実験ではあるが,良好に処理出来ることが分かった。また,UASBリアクターの処理水に溶存しているメタンは,DHSリアクター内で約8%が酸化分解されることが実験結果より試算され,その分解に寄与しているメタン酸化細菌の同定を行うと共に分布を明らかにした。
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