研究概要 |
熱電変換材料が注目を集めている。熱電素子開発の指針は低比抵抗のまま如何に大きなゼーベック係数と低い熱伝導度を実現するかである。ゼーベック係数の絶対値はフェルミ準位における状態密度の微係数に依存するため、状態密度の傾きが急峻な材料に高いゼーベック係数が期待される。これは擬ギャップ系の電子構造の特徴であるので、高い性能指数を持つ熱電材料は擬ギャップ系を探索することにより発見出来ると期待される。本研究では擬ギャップ系として(1)準周期構造を持つ準結晶、(2)金属間化合物Fe_2VAl合金系、(3)強相関物質の仲間であるCa_2Co_2O_5酸化物及びその周辺物質を選び、これらの材料を合成し熱電特性及びフェルミ準位近傍の電子状態を調査することで優れた熱電変換を行なう材料を開発しその機能発現機構の解明を図ることを目的としている。 成果として(Ca,Sr,Bi)_2Co_2O_5が873K以上の高温で無次元性能指数が1.2を越える優れた熱電特性を持つことを見出した。幾つかのCo酸化物が優れた熱電特性を持つ機構の解明を次年度に向けて進めている。また、Fe_2VAl系では化学量論組成からずれることによりn及びp型の熱電材料が得られることを見出している。さらに、Fe_2VAlにSiの添加するとゼーベック係数が増大することを見出した。準結晶系ではAl-Pd-Mn単準結晶を10μm程度まで薄くしてAu,Reをイオン注入しゼーベック係数の変化を調べた。その結果、Reの添加がゼーベック係数を増大させることを見出した。
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