研究概要 |
本研究では,スピントンネル接合をMRAMへ応用展開することを目的としている.本年度は,高性能スピントンネル接合作製のための成膜装置の製作,ならびに素子サイズとスピン反転磁場の関係を明らかにし,微細化に伴うスピン反転磁場の増大に対する対応策を見出すこと,最後に微細加工技術を確立することを目指した.まず,装置の製作であるが,ヘリコンスパッタ装置を立ち上げ,スピントンネル接合を作製しその磁気抵抗効果を調べた結果,磁性層作製条件,Al膜厚および酸化時間を最適化することにより室温で20%以上の磁気抵抗比を得ることができた.今後,絶縁体部の構造を改良し,バイアス電圧依存性に優れたスピントンネル接合の作製を試みる予定である.次に,スピン反転磁場の低減を可能とするため,サブミクロンサイズ反平行結合膜(強磁性体/非磁性体/強磁性体)のスピン反転機構の計算機シミュレーションを行った.その結果,0.2μm以下の素子サイズでは,上下磁性層の膜厚および磁化の差(膜厚差),非磁性層の膜厚を最適に設計すればスピン反転磁場が単層膜のそれより低減できることが明らかとなった.また,アスペクト比が大きな素子ほど反平行結合膜が有効であることが分かった.最後に微細加工技術に関しては,電子線描画およびアルゴンミリングにより作製した.レジスト材の選定,描画,ミリング条件の最適化により,最小素子幅0.2μmの試料が,また最小接合面積0.25μm^2のトンネル接合が作製できた.今後,反平行結合膜の微細加工を行い,スピン反転磁場の素子サイズ依存性等を明らかにしていく.
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