研究概要 |
不揮発性磁気メモリ(MRAM)を開発するため,サブミクロンサイズの強磁性トンネル接合を作製し,微細化に伴うスイッチング磁場の増大の抑制,ならびに信号出力の向上を目指した.非磁性金属層を介して反平行に強く交換結合した強磁性層/非磁性層/強磁性層(反平行結合膜)をフリー層とした.超高真空スパッタ装置を用いて成膜を行った後,電子線ビームリソグラフィー,イオンミリングを用いて微細加工を行い微細強磁性トンネル接合を作製した.絶縁体はAlの酸化物を,強磁性体はCo_<90>Fe_<10>を用いた.したがって,反平行結合膜はCo_<90>Fe_<10>/Ru/Co_<90>Fe_<10>の構造をもつ.ピン層の反強磁性体はIrMnを用いた.接合部がアスペクト比1である場合は,反平行結合膜をフリー層とする強磁性トンネル接合のスイッチング磁場は,素子サイズによらず一定であり,0.2μmの素子幅まで,約70Oeであった.また,ゼロ磁場での出力は,飽和値とほぼ同じであり,メモリとして有効であった.磁気力顕微鏡での接合部の観察結果より,単磁区状態であることが確認された.次にこれらの微細強磁性トンネル接合を磁場中熱処理を行い,磁気抵抗比の測定を行った.その結果,熱処理温度の上昇に伴い磁気抵抗比は増加し,約250℃の熱処理により最大の磁気抵抗比40%を示した,それ以上の温度では,磁気抵抗比は減少していき,約400℃で磁気抵抗比をほぼゼロとなった.反平行結合膜をフリー層とする強磁性トンネル接合は,メモリセルとして有効であることが示された.
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