研究概要 |
今年度は,Sn-Ag-Cu及びSn-Cu系合金に着目し,その組織制御の可能性を凝固現象から調査した.まず,これら合金の凝固から固相冷却過程における金属間化合物の晶出及び析出反応や形態の組織的評価を行い,更に素反応プロセスを熱力学シミュレーションにより検証した.その結果,Sn-Ag-Cu系では主にAgが3.0wt%から3.9%の間でAg_3Sn初晶形成に変化が生じることがわかり,冷却速度の影響を明らかにした.Cu量は0.5〜0.9wt%の間では顕著な影響はない.Ag_3Sn初晶が粗大化した凝固組織が,引張特性の特に伸びへ悪影響することを明らかにした.これによって,この鉛フリーはんだを信頼性高く用いるための最適組成が,Ag量で約3.2wt%以下にあることを提案した.Sn-Cu合金に対しては,微量の添加元素や汚染元素の効果を凝固プロセスの検討で行い,組織制御としてAgやAuの微量添加が効果的であることを示した.前者は非固溶元素で後者は微量固溶元素となり,機械特性へ与える因子が異なる.一方,汚染元素としてのPbの混入は,低融点相の形成や合金粒界に偏析することで熱疲労特性を著しく劣化させることを明らかにした.この結果から,Sn-Cu系合金に対しては,現行部品めっきから生じるPb汚染に注意すべきことを指摘し,特にこの合金が用いられるスルーホール実装の形態では,基板の厚さ方向の大きな熱膨張が大きく影響し,設計上でこの値を小さくすべきことを提示した.この他の成果として,過冷却現象へ与える合金元素微量添加の効果を調べ,Feなどの非固溶型元素の効果が大きいことを明らかにした.これによって,凝固プロセスの制御による組織微細化が可能になると期待され,次年度以降はその場観察と凝固シミュレーションを併せて,合金元素の及ぼす凝固過程への影響を明らかにする予定である.
|