半導体ナノ粒子薄膜を用いた光メモリーデバイスの開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13355030
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 山口 由岐夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20332570)
• 研究分担者: 前之園 真也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (00323535) ; 松井 巧 東芝, 研究開発センター, 主任研究員
• キーワード: 半導体ナノ粒子 / 光記録媒 / 光メモリー効果 / ナノ粒子薄膜 / 塗布・乾燥 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 蛍光寿命測定 / 自己組織化薄膜

研究概要

半導体ナノ粒子薄膜に光を照射し、情報を読み書きする新方式の光メモリーを開発した。記録方式を工夫すれば、一平方インチあたりの記憶容量を百ギガビットとDVDの25倍程度にできる可能性を明らかにした。特に本年度の成果は、蛍光特性を有する化合物半導体の蛍光強度を、同一波長の照射光を用いて可逆的に増加、減少させることに成功し、リライタブルの可能性を明確にした。具体的には、ナノ粒子膜に光照射を行う際、照射強度を変化させることにより制御する。この技術は、再記録可能な高記録密度光メモリーに応用が可能であると期待される。
これまで当研究グループは、蛍光特性を有する化合物半導体の一つであるセレン化カドミウムのナノ粒子からなる薄膜に紫外光を照射すると、光の当たった部分だけ蛍光強度が増加する現象を見出し、光メモリーとしての応用を視野に入れた研究を行ってきた。しかし、一旦増加した蛍光強度を減少させる有効な手法がなく、応用範囲は書換え不可の用途に限られていた。今回開発した技術は、増加した蛍光強度を減少させることを可能とする。記録した部分(光照射により蛍光強度が増加した部分)に、記録時の光よりも照射強度の高い光を照射すると、蛍光強度が減少し、記録が消去されることを見出した。また、記録を消去した部分に、消去時の光よりも照射強度の低い光を照射すると、蛍光強度が再び増加し、再記録も可能であった。記録および消去を繰り返し行うことも可能であった。さらに、蛍光強度は照射光強度により連続的に変化するため、照射光強度を制御することで、現在のデジタル記録の基本である「0」「1」による二値記録ではなく、少なくとも「0」から「4」までの五値で記録することが可能である。新技術は、光照射強度の制御だけで情報の記録と消去が可能であるため、照射用の光源は単一波長でよい。記録装置の記録および消去の光ヘッドを共有化でき、記録装置も単純化されるという利点がある。
尚、蛍光特性や蛍光寿命に与えるナノ粒子薄膜構造や雰囲気の影響を研究し、半導体ナノ粒子の光イオン化による電子状態変化が光メモリー効果の本質であることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Eiha, N., Maenosono, S., Hanaki, K., Yamamoto, K., Yamaguchi, Y.: "Collective fluorescence oscillation in a water dispersion of colloidal quantum dots"Japanese Journal of Applied Physics Part 2 : Letters. 42(3B). L310-L313 (2003)
• [文献書誌] Maenosono, Shinya, Okubo, Tatsuya, Yamaguchi, Yukio: "Overview of Nanoparticle Array Formation by Wet Coating"Journal of Nanoparticle Research. 5(1-2). 5-15 (2003)
• [文献書誌] Maenosono, Shinya, Eiha, Noriko, Yamaguchi, Yukio: "Nonlinear Time-Series Analysis of Photoinduced Fluorescence Oscillation in a Water Dispersion of Colloidal Quantum Dots"Journal of Physical Chemistry B. 107(12). 2645-2650 (2003)
• [文献書誌] Okubo, T., Chujo, S., Maenosono, S., Yamaguchi, Y.: "Microstructure of silica particle monolayer films formed by capillary Immersion force"Journal of Nanoparticle Research. 5(1-2). 111-117 (2003)
• [文献書誌] Nishikawa, H., Maenosono, S., Yamaguchi, Y., Okubo, T.: "Self-Assembling Process of Colloidal Particles into Two-Dimensional Arrays Induced by Capillary Immersion Force"Journal of Nanoparticle Research. 5(1-2). 103-110 (2003)
• [文献書誌] Yamaguchi, Yukio: "Synthesis and functional process technology of nano-particles"Toraiborojisuto. 48(5). 363-368 (2003)