研究概要 |
多糖誘導体型キラル固定相を用いたHPLCによる光学分割は、広く様々な分野で、光学異性体の分離・分析に用いられているが、キラル充填剤は多糖誘導体をシリカゲル上に物理的に吸着させて作製しているため、多糖誘導体が膨潤、溶解する溶媒を溶離液に用いることは出来ない。そこで我々は、セルロース誘導体の側鎖の一部に重合性のビニル基を導入し、シリカゲル上に物理的に吸着させた後、ビニルモノマーとラジカル共重合することにより、優れた光学分割能を損なうことなく誘導体をシリカゲル上に固定化することを試みた。ビニル基をセルロースの6位の側鎖へ位置選択的に導入して固定化を行ったところ、多糖へのビニル基の導入率が低いほど、また用いる架橋剤であるビニルモノマーの量が少ないほど、高い光学分割能を有する充填剤の調製が可能であった。さらにシリカゲル上にもビニル基を導入したところ、効率のよい多糖誘導体の固定化が可能であった。ビニル基を有する多糖誘導体をより簡便に合成するため、ビニル基をセルロースの2,3,6位の側鎖に1段階でランダムに導入したところ、ビニル基を位置選択的に導入した誘導体と同様、シリカゲルへの固定化が可能であり、固定化後にも著しい光学分割能の低下はみられなかった。また、芳香環を有していないビニルモノマーである2,3-ジメチルブタジエンを架橋剤に用いたところ、固定化後に得られるキラル固定相の光学分割能はより固定化前に近い値となった。また本手法を他のセルロース及びアミロース誘導体の固定化に用いたところ、いずれの場合も光学分割能を著しく損なうことなく、シリカゲル上に効率良く誘導体を固定化することが可能であった。以上より、本研究で開発した多糖誘導体固定化型キラル固定相の調製方法は、様々な多糖誘導体に応用が可能であり、今後、次世代型キラル充填剤調製方法として実用化が期待される。
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