表面・界面領域に束縛された高分子鎖の分子運動特性解析法の確立

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13355034
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 田中 敬二 九州大学, 工学研究院, 助手 (20325509)
• 研究分担者: 佐々木 園 九州大学, 工学研究院, 助手 (40304745) ; 高原 淳 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 教授 (20163305)
• キーワード: ポリスチレン / 表面弾性率 / 表面ガラス転移温度 / 走査粘弾性顕微鏡

研究概要

高分子表面・界面に束縛された分子鎖の熱運動特性は内部と比較して著しく異なっている。本研究では、走査粘弾性顕微鏡(SVM)更なる改良を行い、温度変化にともなう高分子膜表面の弾性率変化を直接観察した。
試料としてMn=1.03Mの単分散ポリスチレン(PS)を用いた。示差走査熱量測定に基づき評価したバルク試料のガラス転移温度(Tgb)は378Kであった。PS固体膜はスピンコーティング法によりシリコン(Si)基板上に調製し、十分に熱処理を施した。膜厚は100nmとした。PS膜表面の分子鎖熱運動性はSVM測定に基づき評価した。
温度上昇にともなう弾性率の変化を可視化するため、PSの一部をナイフで削り取り基板のSiを露出させ、SVM測定を行った。SVM像中、弾性率の高い領域は明るい領域として観察される。測定温度上昇に伴いPS膜の存在する領域としない領域でコントラストが明確になった。より定量的に評価するため、PSと基板の弾性率の差、ΔEの温度依存性を温度の関数としてプロットした。測定温度範囲でSiの弾性率は変化しない。ΔEの減少率は340K付近で変化したことから、PS膜表面の弾性率はこの温度を境に急激に変化したと考えられる。この温度はこれまで報告してきたPS膜表面のTgと良く対応しており、この結果からも、高分子膜表面の分子鎖熱運動性は内部と比較して活性化していると結論できる。SVMを用いて表面分子運動特性を視覚的に評価することができた。

研究成果

• [文献書誌] X.Jiang, C.Z.Yang, K.Tanaka, A.Takahara, T.Kajiyama: "Effect of Chain End Group on Surface Glass Transition Temperature of thin Polymer Film"Phys. Lett. A. 281. 363-367 (2001)
• [文献書誌] N.Satomi, K.Tanaka, A.Takahashi, T.Kajiyama: "Effect of Internal Bulk Phase on Surface Viscoelastic Properites by Scanning Probe Microscopy"Macromolecules. 34. 6420-6423 (2001)
• [文献書誌] X.Jiang, K.Tanaka, A.Sakaki, A.Takahashi, T.Kajiyama: "Surface Relaxation Behavior of Proton-and Perfluoroalkyl-Terminated Poly(2-vinyl pyridine)Films"Polymer. 42. 8959-8964 (2001)
• [文献書誌] K.Tanaka, A.Takahara, T.Kajiyama, T.He, et al.: "Effect of Low Surface Energy Chain Ends on the Glass Transition Temperature of Polymer Thin Films"Macromolecules. 35. 1491-1492 (2002)
• [文献書誌] K.Tanaka, K.Kojio, R.Kimura, A.Takahasra, T.Kajiyama: "Surface Relaxation Processes of Poly(methyl methacrylate)Brushes Prepared by Atom Transfer Radical Polymerization"Polymer J. 35, 44-49(2003).. 35. 44-49 (2003)
• [文献書誌] D.Kawaguchi, K.Tanaka, T.Kajiyama, A.Takahara, S.Tasaki: "Mobility Gradient in Surface Region of Monodisperse Polystyrene Films"Macromolecules. 36. 1235-1240 (2003)