研究概要 |
マイクロアレイは、一度の実験でそのプローブ数の遺伝子についての遺伝子発現を解析でき、ハイスループットな機能ゲノム科学の展開に威力を発揮する。我々は、コムギの典型的な生活環11組織から得られたEST、148,676シーケンスをphrap法によりグルーピングしたコンティグ34,064を基に、アジレント22Kコムギマイクロアレイを作成した。このオリゴマイクロアレイは、クロスハイブリの低さを実現するために、コンティグシーケンスの情報に基づいて、60merの特異的なセンス鎖をプローブとする必要がある。そのため、まず、ESTコンティグについて、公的データベースとの相同性検索と末端配列のPolyA・PolyTの検出を行い、センス鎖の予測を行った。相同性検索に用いたデータベースは、イネ完全長cDNA配列(KOME)、nr(NCBI)、nt(NCBI、但し、ゲノムシーケンスおよび非アノテーションシーケンスを除いたもの)、イネゲノム上予測ORF(TIGR)をである。次に、設計された60merオリゴプローブ21,939プローブを搭載した、コムギマイクロアレイVer.1について、プローブの有効性を確かめた。コムギ緑葉より抽出したRNAを抽出し、Low RNA Inputリニア増幅&ラベル化キットを用いて、Cy3およびCy5で標識し、ターゲットとしてハイブリダイゼーションを行った。このアレイの有効性と再現性を検証するために、シグナルインテンシティをスキャンし、セルフ実験でのインテンシティプロットとカラースワップ実験でのコンベアプロットを描いた。セルフ実験の結果、そのインテンシティプロットはy=1.0015xの直線上に分布し、その相関係数は0.9958と非常に高かった。また、シグナルインテンシティがバックグラウンドの標準偏差の2.6倍未満となるプローブは全体の4.9%であった。以上のことから、ESTの大量解析により設計された、このコムギ22Kオリゴマイクロアレイは再現性が高く、発現解析に有効であることが確認された。
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