TTウイルス(TTV)というウイルス名は発見の発端となった患者のイニシャル(T.T.)にちなんで研究代表者らが命名した暫定的な名称であるが、2003年に国際ウイルス命名委員会(International Committee for the Taxonomy of Viruses : ICTV)によって正式名称が決定された。研究代表者もworking groupの一員として、ICTVの決定に参加した。命名にあたって、環状の遺伝子構造にちなんで"ネックレス"や"指輪"の意味のラテン語が用いられ、ウイルス名は略称が同じくTTVとなるように「Torque Teno virus(トークテノウイルス)」、ウイルス属は「Genus anellovirus(アネロウイルス属)」に決定された。TTVの遺伝子配列は多様性が顕著であり、少なくとも39種類の遺伝子型(genotype)が存在し、系統発生学的に大きく5種類の遺伝子グループ(genetic groups)に分類できることが分かった。次に、TTVの各genetic groupのDNA配列にそれぞれ特異的に結合しうるプライマーセットを作製し、selective PCR法によって5つのgenetic groupを簡便に判定しうる系を確立した。その検出系を用いて、年齢別にTTVの各genetic group別の陽性頻度を調査した結果、系統発生学的に最も古いグループ4のTTVが乳幼児の時期に感染し、成人でも高頻度に感染していることが分かった。グループ1のTTVは生後6ヶ月以降に感染する例が少しずつ増え、成人でも10-15%の陽性率であった。グループ3には最も多くの遺伝子型のTTVが属するが、グループ1やグループ4のTTVと共感染している成人例が多いことが明らかになった。さらに各genetic groupごとにTTV DNAをreal-time PCR法によって定量的に検出できる系を確立し、現在、臨床検体への応用を進めている。
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