研究課題
初年度の目標として、マテリアルの準備と、診断用候補遺伝子の絞り込み、複数遺伝子の正確な発現定量法の確立をめざした。マテリアルについては、現在までに約50例分のcDNAの準備を終了した。診断候補遺伝子については、約500の候補遺伝子からアレイデータの詳細な再検討により、臨床因子との相関度の高い遺伝子を139個選抜した。まず、その全てについてRT-PCRによって正常肝組織、もしくは肝癌組織での遺伝子発現を確認した。発現が確認されたもに対して、TaqManプローブの作成を行って内因性コントロールとして使用するGAPDH遺伝子とのPCRによる反応物生成曲線の比較から、TaqMan法による定量的検討が可能かどうかを各遺伝子について検討した。複数遺伝子の発現定量法については、96穴プレートを用いて、正確性を増すためにそれぞれの遺伝子を正常部、癌部について2穴ずつ定量を行う方法とした。遺伝子の組み合わせなどの検討の結果、1プレートで1症例に対して一度に22遺伝子の正常部、癌部の発現定量が可能なプライマーの組み合わせが現在までに3セット作成できた。この66遺伝子については、すでに臨床例10例分の遺伝子発現の検討が終了している。検討終了遺伝子のうち約1/3(20遺伝子)については遺伝子発現と分化度や脈管侵襲など肝細胞癌の重要な臨床因子との関連との相関が確認された。逆に約1/3についは相関が確認できなかった。また、残りの1/3については、判断のためにさらに症例の追加によるスクリーニングがさらに必要と思われた。今後、確立されたシステムを用いてさらにスクリーニングを進め、早期に最終目標である50-100遺伝子の選抜を終了し、予後診断を目的としたスコアリングシステムを構築する予定である。