研究課題
基盤研究(A)
本研究はフィリピン南部を含むウォーラセア海域世界の20世紀における構造と動態を、海外での臨地調査と公文書館などでの文献・資料調査を通じて、(1)海域住民の生活世界、(2)その生活世界のつながりとしての海域ネットワーク、(3)生活世界とネットワーク双方を支配・管理する政治制度、の3点に注目することにより明らかにしようとした。初年度は上述の(1)〜(3)について各メンバーが個別調査を行ったほか、スラウェシ島沿岸部において合同広域調査を遂行した。その結果、当該海域における生活世界とネットワーク、そして政治制度の間の相互作用に関するアウトラインを描出することができた。次年度はマクロな政治的文脈における、ウォーラセア海域の生活動態に調査の重点を置きながら、(1)〜(3)について引き続き個別調査を行ったほか、西ティモール沿岸域において合同調査を、そしてインドネシア科学院のメンバーとの間で意見交換を行った。その結果、当該海域における住民登録・出入国管理の変遷、ならびに生業活動、人口移動、資源利用形態の変化を国家の開発政策等と相関させながら明らかにすることができた。最終年度も引き続き(1)〜(3)についての個別調査を行い、そしてジャカルタのインドネシア科学院で平成16年3月に開催された国際ワークショップにおいて成果報告を行った。そこでは、20世紀という時間枠の中でウォーラセア海域の各小海域圏が住民の杜会経済的空間として編成・再編成されてきた歴史過程を、近代国家による領域管理の進展と相関させながら跡づけることを共通の課題とした。そして最終的な成果として、本研究の当初の目的であるウォーラセア海域の構造と動態を明らかにするべく、上述の(1)〜(3)の視点を3ヵ年の調査結果をもとに総合化し、ワークショップでの報告ならびに議論をまとめ、成果報告書として編纂した。
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