研究概要 |
今年度は,SARS問題のため中国の調査を延期し,インドネシア,ガーナ,およびインドで現地調査をおこなうとともに,昨年度の成果を一部公表した。 性急な分権化をめぐり,さまざまな問題の噴出しているインドネシアでは,西ジャワ,中ジャワ,西カリマンタン,および東カリマンタン州を地域として選んだ。その中で事例調査を行ったが,西ジャワおよび東カリマンタンは住民による森林保全のとり組みに関する事前情報をもとに選定し,中ジャワと西カリマンタンは逆に国有林および自然保護区の管区を選び,そこで住民との間にどのような関係がみられるのかを明らかにしたというちがいがある。その結果,西ジャワでは農民が自主的に森林保全にとりくみはじめた背景に,林内開墾や薪炭材採集による土壌劣化が農業生産にも影響を与えていることに対する危機感があることが明らかになった。また東カリマンタンでは,森林開墾後の耕作放棄地に対し,造林補助金がうまく活用されている例として位置づけられた。一方中ジャワおよび西カリマンタンでは依然として不法伐採や開墾が収束せず,保全に向けた住民の組織化にはまだ時間を要することが窺えた。以上の一般論としての現象と成功例とを,どのような提言に結びつけるかは次年度の課題として残されている。 ガーナでは,国有林の境界およびその中の植生が今日なお維持されている背景を,植民地期に遡って文献調査した。またインドでは調査許可の取得に時間を要し,3月にケララ州で地方分権にしたがって実施されている参加型森林管理の現状を調査した。いずれも他の発展途上国に較べ,国有林管理に成功している例として位置づけることができるが,資料のとりまとめおよび公表は次年度にもちこされることになる。
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