研究分担者 |
林 幸博 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (90277400)
山田 祐彰 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助手 (60323755)
及川 洋征 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助手 (70323756)
小嶋 華津子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 講師 (00344854)
野瀬 光弘 ひのでやエコライフ研究所, 研究員
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研究概要 |
本研究は,近年発展途上国において推進されている林野管理の分権化に関して,制度と実態の相互作用が森林資源に対しどのような影響を及ぼしているのかを明らかにしようと試みたものである。事例として,(1)中央集権体制により天然林の保護と植林を推進している中国,(2)中央政府と地方政府の連携のもと,林野管理における住民参加を展開しているインド,および(3)分権化の過渡期にあるインドネシアとガーナを選んだ。最終的には,それぞれの事例を並列に比較するのではなく,1997年の経済危機を発端に,民主化・分権化がすすめられる中,却って違法伐採や森林火災の問題が拡大しているインドネシアの状況を相対化するために,中国およびインドを対比させるという方法をとった。 研究手法としては,制度にかかわる文献研究と実態にかかわる社会調査,さらに森林資源をめぐる動態を把握するために衛星画像解析も加えたため,まだ解析の終わっていない課題も含まれるが,現段階では以下の点が明らかになった。 1)中国における天然林保護政策と退耕還林政策にかかわる成果は,経済成長にともなう中央政府予算の増加と非農林業部門における就労機会の増加に裏打ちされたものである。 2)インドにおける共同森林管理の進展は,森林を地域社会や社会的弱者に対する福祉の手段として位置づけた中央政府の決定に負っており,その実施を担っているのは19世紀後半から培われた国有林の管理システムならびに森林官とNGOの連携である。 3)インドネシアにおける分権化は,地方政府のガバナンス能力の有無を考慮せずに推進された結果,一部の成功例を除き,森林は資金力や余剰労働力を有する人々の短期的収奪の場となっている。一方,天然林資源の枯渇にともない,農地や荒蕪地における住民植林の成功例も一部には認められ,そこでは補助金と仲介者としてのNGOが重要な役割を果たしている。
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