本研究の目的は、プレートの誕生の場とプレートの沈み込みなどプレート境界の「いま」の活動(微小地震活動)と、その活動を可能にしている「舞台」(つまり地下構造)を解き明かすことである。地震活動や地下構造を詳しく調べるには、その現場に行き、受信器としての地震計を多数展開して自然地震観測を行ったり、人工地震(制御震源地震学)実験を行うのに勝る方法はない。こうして世界各地で本研究を行ってきた。 本年度は、アルゼンチン国立南極研究所と共同して、アルゼンチン南部のプレート境界で自然地震観測を行って、プレート境界の現在のありさまを解明した。この付近は、南米プレートとスコシアプレートの境界が南米大陸の南端を横切りながら、大西洋から一部太平洋まで達しているところだが、陸上の地震観測点から離れているために、このプレート境界で起きている地震活動については、ほとんど知られていなかった。 このため、日本から高感度の地震計6台をアルゼンチン南端のウスアイア市まで運び、アルゼンチン国立南極研究所と共同して、パタゴニア・フェゴ島一帯で地震観測を展開して継続的な自然地震観測を行った。 高緯度のうえに気象条件が厳しいフィールドだけに、太陽電池で発電可能な現地の夏を中心に地震観測を行った。また日本のチームが帰国したあとも、共同研究者であるアルゼンチン国立南極研究所の研究チームが地震観測を継続した。観測したデータはブエノスアイレスのアルゼンチン国立南極研究所に定期的に運び、データ処理を行っている。
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