研究課題
基盤研究(A)
本計画の年度ごとに地震観測を強化し、解析システムを高度化した結果、トルコ北西部イスタンブール周辺域の微小地震活動モニターシステムの完成をみた。現在では、ウェブ上で地震活動の推移が常時把握できるとともに、地震発生メカニズムなどの研究用として、主な地震の情報をウェブ上で公開している。我々自身は、こうした観測システムから得られる地震データを地震波トモグラフィーの研究に使用し、イズミット地震震源域の西方で近い将来に発生が予想される大地震の震源域では、地震活動が浅くなる傾向にあることなどがわかった。中規模地震データに対する波形解析からは、地震発生のメカニズムに関する情報を蓄積し、地殻応力分布の様子が把握できた。地震活動そのものについては、イスタンブール南方域に予想される大地震の震源域では活動は活発ではなく、その両端の地域でやや活発な状況となっている。1年間の震源データ(ウェブ上で公開)を見ると、マルマラ海を東西に走る海底活断層の存在が浮かび上がってきており、予想される地震像が浮かび上がってきた。電磁気観測では、広帯域MT観測、長周期MT観測、短周期MT観測を行い、イズミット地震の震源域全体をカバーする広い領域の比抵抗構造を解明した。その結果、震源域は一般に高比抵抗となっていることが確認でき、高比抵抗層がアスペリティーに対応するという重要な結論が得られた。また、低比抵抗層が下部地殻やマントルに広範に存在しており、部分溶融層の存在とその広がりが確認できた。イズミット地震時に新しく発見した地震ダイナモ効果については、新潟県中越地震など我国で発生した地震の余震をターゲットとして観測研究を進めた。その結果、M4.0程度以上の地震については、この効果が常に観測できることがわかったが、地震波到達前に到達することが予想される電磁シグナルは、規模の小さい地震ではノイズに埋もれて検出できない。
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