研究概要 |
種多様性と生態系機能の関係についてはよく解っていない。これは地球環境変動の予測にも必要な情報である。例えば、地球環境変化によって森林も変動すると予測されるが、その時に種多様性が低いほど森林生態系は脆弱(あるいはより不安定)なのであろうか。この研究の目的は、炭素固定機能など地球環境を制御する熱帯降雨林に対象を絞り、地域の樹木多様性がどのように熱帯降雨林生態系の機能を支配しているのかをマレーシアとハワイの比較から明らかにすることである。初年度に当たる本年度は、マレーシアのボルネオ島キナバル山の標高1700mに土壌形成年代の異なる2長期試験地を設定した。また、ハワイ諸島ハワイ島の標高1200mにも火山噴火後の地質年代が異なる7箇所(300,1500,5000,9000,1,400,000年)に長期試験地を設定した(ハワイ・トランセクト)。これら全試験地は、平均気温18度C、年降水量3000-4000ミリ、年間光量子量8000mole/m2、気温年格差1-2度Cにあり、整った気候条件を持つ。試験地の地質や成立年代を反映して、土壌リンや窒素の供給量は各トランセクトに沿って貧〜富栄養に予測的に変化する。マレーシア地域の樹木多様性は数千種のオーダー、ハワイのそれは十数種のオーダーで、地域の樹種多様性は極端に異なる。 各試験地では、測量によって地形と面積を測り、標識によって境界を確保した。内部の一定以上の直径を持つ樹木全てに識別タッグをつけ、種同定、測樹を行った。試験地内には、生産される落葉・楽枝を捕捉するためのリタートラップを設置した。代表的試験地には自記気象測器を設置し、気温・湿度、光量子、雨量の長期観測を始めた。土壌栄養塩について、置換性陽イオン・陰イオンリンの画分、窒素の純無機化速度を分析した。
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