研究課題
(1)東南アジア地域の2,000〜3,000万ha存在するパイライト強度酸性泥炭湿地(〜pH3)における可溶性有機物及び底質堆積物の有機物の分布、その季節的変動及び周辺の植生との関連を明らかにすることを目的として、タイ南部の熱帯泥炭湿地及び北海道美唄泥炭湿原において泥炭試料を採取し、泥炭試料中の有機物の組成分析及び化学構造分析を実施した。以上の結果及び植生を解析した結果、有機物の堆積が土壌のpHを緩衝し。森林植生を可能にしていることを明らかにした。(2)中国東北部に拡がる強度アルカリ土壌(pH10以上)地域の植生生態系の調査を実施するとともに、アルカリ土壌形成について考察した。その結果、強度アルカリ土壌中の有機物は極めて低いことが判明し、アルカリ耐性が比較的高い植物の種子を、現地で採取した植物の枯れワラ及び農産廃棄物で団子状にすることで、強アルカリ土壌であっても高い発芽率及び活着率が得られることが判明した。(3)中国北西部に広がる沙漠地帯(寧夏回教自治区)において、沙漠緑化のための前段として実施されている流動沙丘の固定化のためのムギワラを用いた方格沙障法(Checkerboard technique)の効果について検討した。その結果、ムギワラから溶出した微生物変性リグニンのキレート作用によって砂粒子が団粒化していることを明らかにした。(4)以上のような強酸性泥炭湿地、強アルカリ土壌及び沙漠のような劣悪な土壌環境は今日でも拡大を続けている。その一方で、そのような極めて過酷な土壌を修復し、持続的生物生産を可能にする努力が精力的に進められている。修復の鍵を握っているのは共通して植物遺体、とりわけ微生物で著しく変性され水溶性となったリグニンであるのではないかということが明らかになった。また、それぞれの条件下での植生生態系を詳細に検討することで、より環境耐性のある植物を先行的に植生していくことが重要であろう。
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Proceedings of International Symposium on Biomass Asia 2005. Tukuba.
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東京大学演習林報告 (印刷中)
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