研究課題/領域番号 |
13410007
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤井 教公 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70238525)
|
研究分担者 |
吉水 清孝 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (20271835)
細田 典明 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (00181503)
佐藤 錬太郎 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40196291)
沼田 一郎 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助手 (20261258)
ゆはず 和順 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (80210590)
|
キーワード | 『法華経』 / 『法華論』 / 仏性 / 慧思 / 沢庵宗彭 / 『不動智神妙録』 |
研究概要 |
研究の第一段階にあたる本年度は、仏教の世界観・人間観はどのようなものであるかということを探り、それが仏教独自のものかどうかを検証することに重点を置いた。同時に中国・日本において仏教がそれぞれ世界観・人間観形成にどのように与っているかという問題を扱った。そのために必要な資料、参考文献の収集整備に努めた。 研究代表者は、インド仏教における『法華経』の唯一の残存注釈書である世親の『法華論』について、複数の研究協力者の助力を得てこの漢訳テキストの部分的訳注を作成した。この『法華論』は『法華経』に仏性思想を読み込んでおり、中国仏教では天台、三論、法相の各宗に影響を与え、さらに日本天台にはより大きな影響を及ぼしている。『法華経』には一仏乗を根拠にした一切皆成思想が説かれているが、『法華論』はそれを『涅槃経』などの説く仏性思想と結びつけて解釈し、一切皆成の根拠を仏性として明確に示している。この点が中国・日本で本論が受け入れられ易かった要因の一つになっているといえよう。 研究代表者は、中国天台の大成者である智ぎの師、南岳慧思においてこの仏性思想がどのように受容され、形成されたかという問題について検討した。その結果、慧思の仏性思想は『法華経』、『般若経』『大智度論』などの経論を素材とし、般若・空の思想を基盤として成立しており、実践的禅定体験の中で実現される空観によって見られた「実相」というべきものであることが明かになった。 また研究分担者は中国老荘思想と隠逸思想、それらと仏教との融合の所産である禅仏教を扱い、禅の思想が日本においてどのような思想的影響を与えているかという点に着目し、具体的に沢庵宗彭が近世武道に与えた影響を探る意味から、まず『不動智神妙録』のテキストの整備に努め、古写本を比較して批判的校訂本を作成した。
|