美的言説の政治性に関する比較思想史的研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13410017
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 水田 恭平 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (50093711)
• 研究分担者: 山田 広昭 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40210471) ; 長野 順子 神戸大学, 文学部, 助教授 (20172546) ; 廳 茂 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10148489) ; 安西 信一 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50232088) ; 小田部 胤久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (80211142)
• キーワード: ゴシック / 崇高 / 悲劇 / 表象 / 象徴主義 / 美 / 危機 / 日本浪漫派

研究概要

本年度の実施計画として掲げたものは、広義のロマン主義思想に重点をおき、イギリス、フランス、ドイツにおける展開の差異性を政治過程と関連づけながら研究することであった。そのうち次の項目について研究を進めることができた。
1.18世紀イギリスにおける「趣味論」の展開を、英国式庭園、ピクチュアレスク、ゴシック論、ゴシック小説、などの具体例の分析を各研究者が相互に検討することで追及することができた。
2.19世紀フランスにおける象徴主義からの近代詩の展開に見られる文学観を、それに時間的に先行するドイツ・ロマン主義における文学観と関連づけ、両者がよって立つ政治的基盤とその差異との関連において考察した。
3.18世紀末からのドイツにおけるロマン主義文学が打ち出した美に関する思想を、特に社会思想史的含意に焦点をあわせて「崇高論」や「悲劇論」との関連で検討した。
4.18世紀から19世紀にかけての主にロマン主義思想が20世記のラディカルな法思想家カール・シュミットにおいて如何に受け止められたかを、「表象」という観念に注目しつつ検討した。
5.以上のなかでもとりわけシュミットの思想の検討は、芸術と法という領域を接続するものとして「表象」という観念が重要な役割を演じていることを明らかにしてくれた。シュミットとの関連において、ヨーロッパのロマン主義の日本における受容としての「日本浪漫派」が果たした政治的役割についての検討も、当共同研究の重要なテーマであることが明らかになった。来年度以降の研究の重要な課題として継続することにする。

研究成果

• [文献書誌] 水田 恭平: "統合と分離"シェリング年報. 9号. 48-57 (2001)
• [文献書誌] 廳 茂: "もう一つの「日常」論-N.アインシュタインの「日常」の社会学構想(下)"近代. 87号. 1-81 (2001)
• [文献書誌] 長野 順子: "'The Aesthetics' and the System of Exclusion"AESTHETICS (Japanese Society of Aesthetics). 10号. 15-25 (2001)
• [文献書誌] 小田部 胤久: "「自然」と「先入見」-18世紀イギリス趣味論のアポリア"美学. 205. 14-27 (2001)
• [文献書誌] 小田部 胤久: "人間的芸術の行方-20世紀における芸術終焉論の行方"美学芸術学研究. 20(印刷中). (2001)
• [文献書誌] 安西 信一: "Transplantation of Picturesque"Journal of the Faculty of Letters, The University of Tokyo, Aesthetics. 25. 61-76 (2001)
• [文献書誌] 安西 信一: "初期イングリッシュガーデンの政治性とその消失"芸術文化(東北芸術文化学会). 6. 22-44 (2001)
• [文献書誌] 安西 信一: "「イングリッシュガーデン」の国際性?"国際交流(国際交流基金). 93. 42-49 (2001)
• [文献書誌] 水田 恭平: "危機の言説・美の言説 P.73-104(『アヴァンギャルドの世紀』所収)"京都大学学術出版会. 419 (2001)
• [文献書誌] 小田部 胤久: "芸術の逆説 -近代美学の成立"東京大学出版会. 312 (2001)
• [文献書誌] 山田 広昭: "三点確保"新曜社. 294 (2001)
• [文献書誌] 長野 順子: "モンスター幻想 P.11〜24(『ファンタジーの世紀』所収)"九州大学出版会. 345 (2001)