研究概要 |
本研究の目的は,前頭連合野における報酬に基づいた行動におけるモノアミンの役割を明らかにすることにある. この目的のために,まず,2頭のサルに眼球運動性の報酬依存的ルール切り替え課題(Oculomotor self-alternation,OSA)を訓練した.この課題では,10-15試行のブロックで,赤と緑の視覚刺激のどちらかが報酬と結びついており,サルは今どちらの刺激が報酬と結びついているかを自分でモニターし、ルールにしたがって切り替えなければならない. この課題遂行中にドーパミン受容体阻害剤を前頭連合野の局所部位に微量投与し,注入前と後の行動パラメータを比較・解析した.その結果,ドーパミンD1受容体阻害剤であるSCH23390を投与した場合に,一部の領域で、行動を切り替えるまでに多くの試行数を要する,行動の切り替えが出来ないなどの障害が見られた.D2受容体阻害剤であるスルピライド,ノルアドレナリン受容体阻害剤である,ヨヒンビン,プラゾシン,プロプラノロールの投与ではこれらの障害が見られなかった. このことは,前頭連合野の担う報酬に基づいたルールの切り替えにドーパミン中でもそのD1受容体が重要な役割を担っていることを示唆する. 今後はさらに,このことをニューロンレベルで調べるために,同様の課題遂行中にニューロン活動を記録し,課題関連活動が見つかったらそのニューロンに対して薬物を直接投与し,実際にドーパミンがどのようにニューロン活動を修飾するのかという問題にアプローチする予定である.
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