ヒトの成人と6ヶ月齢の乳児を対象とし、連続的な言語朗読および歌唱音声からの単位分節化についての一連の実験を行った。実験にあたり、まず実験プログラムを作成、13年度中旬より本実験を開始した。当初として、日本語話育の成人10名、日本語圏で生育している乳児10名を被験者とした。刺激としては、被験者にとって全く同一の言語である英語のスピーチおよび日本語の刺激を用い、反応の差異を検証した。刺激音はふつうヒトにとって通常である順向のプレイバックと、全く未知である逆向のプレイバック音を呈示を行い、それについての彼らの分節化の程度を比べたところ、言語体系が未納であるか既知であるかにかかわらず反応に差異はなく、かつ順向の刺激呈示に対し逆向より分節化は容易であることが判明した。実際の分節化の程度の測定は、長さが1分におよぶ文(30語文)を平常の発話および歌唱によってプレイバックしたのち、その中に埋め込まれた単語2つをターゲットとし、その1つを各試行で文のプレイバック5秒後に提示し、注視時間を測定する手法によって実施された。ついで、コントロール条件として、ターゲット刺激の語と同じ音節数でありながら、以前にプレイバックされなかった語彙を呈示し、注視時間をターゲット刺激との間で比較したところ、注視時間はターゲット刺激の際に有意に長くなることが明らかというのだった。このことは、われわれヒトの言語音に対する認知の様式が学習に依存するものでなく、生得的なものであることを強く示唆している証拠であると考えられる。来年度にひきつづき同様の実験をニホンザルを対象に行うことを予定している。
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