ヒトの6ヶ月齢の乳幼児および3ヶ月齢の乳児それぞれ10名を対象として、連続的な言語朗読および歌唱音声の刺激呈示を行い、単位分節化の程度を検証した。実験プログラムは昨年度に開発したものを用いた。刺激については以前より使用したものに加えてフランス語を新たに追加した。3ヶ月齢の乳児については未知の言語に関しては単位分節化が困難だあったが、6ケ月齢では可能となることが判明した。ヒトでは既知の言語体系について下部単位の弁別ができるようになると、その能力を未知の刺激に対しても拡張し得るようになることが明かとなった。その手がかりとしては単位末尾の周波数の変調パターンが重要であると考えられる。そのことはニホンザルを用いた実験からも示唆される結果となった。彼ら10頭に対し、言語刺激を順向および逆向で呈示してみると、いかなる言語を用いようとも、順向の方に逆向より強い選好傾向を示すことがわかった。そこで順向を逆向のspeechの流れを区分する音響特徴とは何であるかを分析したところ、周波数の変調パターンであることが判明した。順向では下部単位の末尾においてピッチの下降が顕著であるが、それが逆向では消滅することが大きな要因として作用していると推測される。またニホンザルについて、その遂行能力を発達的に検討したところ、年齢差のないことが明かとなった。認知に経験の有無は働かず、この行動は生得的に彼らは付与されているのではないかと考えられる。
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