研究課題
本研究の目的は、多様な動物種を対象に、明示的に提示されない事象の認識過程を実験的に分析し、相互に比較することを通じて、物理的・社会的環境を認識するための制約条件がいかに進化したのかを明らかにすることである。本年度は以下の研究をおこなった。()内は共同研究者。1)フサオマキザルの知覚的補間過程を分析し、隠蔽された輪郭と内部の模様をおおむねヒトと同様の原理に従って補間することをさらに確認した。2)フサオマキザルの時空間境界形成過程を分析し、ヒトやチンパンジーとほぼ同様の知覚を確認した。ハトではやや不明瞭なものの同様の傾向が見られた(牛谷)。3)ハトはミュラーリヤー順錯視を知覚するが、矢羽を主線から離すときに見られる逆錯視は生じないことを示す資料を得つつある(中村ら)。4)ニホンザル0歳児における種の認識の発達過程を分析し、彼らが種特有の音声と映像の関連性を認識していることを示した(足立ら)。5)ニホンザル0歳児を対象に、生物学的概念の発達を検討し、彼らが動物は自発的に動くという認識を持つこと、またその手がかりはふわふわした被毛にあることを示した(堤ら)。6)社会的場面で他個体の行動を手がかりにした推論がおこなえるかを、迷路課題を用いて、ラット、ハムスター、ツパイ、フサオマキザルで比較している(高橋ら)。7)フサオマキザルは共同作業場面で、自身に即時的利益がなくても協力的に振る舞うことを示した(服部ら)。8)コンピュータ迷路課題を用いて、ハトが、提示された課題を実際に操作する前に、取るルートを計画していることを示唆する結果を得た(宮田ら)。9)フサオマキザルが、自身に得られる利益が一定の時、他者の得る利益に対して感受性を持つかの検討を始めた(黒島ら)。10)フサオマキザルが、道具と報酬と環境要因の3つの間の因果関係を考慮した道具選択を行えることを示した(佐藤ら)。
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