やわらかさ知覚に関する感性評価をするために、まず評価のための刺激素材を9種類作成した。刺激素材は2種類のシリコンゲルの配合比率をさまざまに変えたものである。一般に軟物体に一定の歪を加えると応力緩和現象が観測されるが、これをクリープメーターを用いて力学計測した。その特性をモデル化するためにVogtモデルとMawellモデルによるあてはまりを検討した結果、3個のばねと2個のダッシュポットによるMaxwellモデルが最適と判明した。これらのばね定数と粘性定数は配合比率と単調な関係にあり、やわらかい素材は両定数とも値が小さく、硬い素材は両定数とも値が大きかった。 このような特性をもつ刺激素材を人間がどのように知覚しているかを調べるために、やわらかさに関するさまざまな形容詞を用いて各刺激素材を10段階で評価させ因子分析したところ、2因子を抽出した。第1因子は「やわらかさ」因子であった。第2因子は「弾力」因子と解釈できた。各因子の得点を各素材について求めたところ、「やわらかさ」の得点はMaxwellモデルの対数化したばねとダッシュポットの両方の値と単調な関係にあったが、「弾力」の得点は素材ごとにばらついていて力学計測した値と単調な関係にはないことがわかった。事前の予想では、心理学的なやわらかさがダッシュポットに対応し、弾力がばねに対応するのではないかと考えていたが、予想が裏切られる形となった。
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